2006年2月5日
日本医労連関東甲信越ブロック・東京医労連
ヘルパー集会への問題提起

1、はじめに

 4月1日より改正介護保険が実施され、「新・予防給付」がはじまります。新予防給付により、これまで介護サービスを受けていた160万人の方が、介護予防サービスに変わると言われています。
 介護予防サービスは必要なサービスではありますが、生活支援サービスや身体介護サービスがあって初めて必要となるサービスです。
 しかし政府は、ヘルパーが必要でないサービスを行っているために利用者の介護度が重くなるとして、介護予防サービスを導入しました。これまで、ヘルパーの介護サービスを受けて自宅で暮らしてきた方が、介護予防サービスだけで在宅で暮らすことが出来るのかと、多くの介護関係者が疑問の声を上げています。
 また、介護予防サービスの導入により、ヘルプ労働やヘルパーの労働環境が大きく変わろうとしています。そのために、少なくない事業所で、介護予防サービスの導入で介護事業の収入が減ることを予想して、ヘルパーの賃金や労働条件を見直す動きが出ています。
 高齢者や障害者の方が安心して介護サービスを受けられるためには、介護保険制度の改善とともに、介護を支える人材を確保するために、ヘルパーの労働環境改善が必要となってきます。
 また、ヘルパーの仕事は、利用者が在宅で暮らせるためになくてはならない仕事で、社会的に大きな役割を担う職種です。同時に、専門的な知識と技術に培われ、その人がその人らしく暮らせるために必要なサービスを行うのがヘルパーです。社会的な役割に相応しい身分保障を確立するために、今日の集会は重要な集会となります。


2、改正介護保険・介護報酬改定でヘルパーはどのような影響をうけるか。

 平成18年度介護報酬等の改定が出されました。内容を見ると、介護予防訪問介護では、現在の要支援の利用限度額月61,500円より低く抑えられ、最高で月40,100円(要支援2で週2回を越える利用者)となっています。
 また、介護サービスでも生活支援でも、今まで1時間以上のサービスの時には、30分増すごとに830円の加算がありましたが、今回の改訂で加算が廃止されています。
 このように介護予防サービスと介護サービスの報酬が低く抑えられたために、事業所の収入が減ることが懸念されます。そして介護事業者は、収入が減ることを理由に、ヘルパーの時給や労働条件の見直しを強行することも予想されます。
 また、新たに特定事業所加算をつくり、一定の算定要件を整えている事業所に10%から20%の加算を付けるとしています。より良い介護サービスを提供するためには、ヘルパーの労働環境が整い、研修や教育が充分に保障されるために、特定事業所加算は必要かもしれません。しかし算定要件の中には、事業所の介護職員の中で介護福祉士の割合が30%以上であることが明記されています。事業者が特定事業所加算を取るために、2級ヘルパーを意識的に排除するような傾向(介護福祉士の資格を取ることを入職の条件に)が出ることが懸念されます。
 介護職員基礎研修の義務化と特定事業所加算によって、2級ヘルパーが働けなくなるようなことは絶対にあってはならないし、そのために、介護職員基礎研修を国や自治体の責任で保障さえる取り組みが一段と必要となってきました。
 このように、改定介護保険・介護報酬改定によって、ヘルパーの働く権利が脅かされ、ヘルパーのリストラが進行することが心配されます。


3、ヘルパーが人間らしく働き続けられるために

 1月20日から始まった通常今回に、医療制度改革(改悪)法案が提出されます。今回の医療制度改悪法案では、ターミナルの患者さんや重度の患者さんを在宅で見ることが強調されています。患者さん・利用者さんが在宅で生活していくには、医療・看護・介護の充実が必要です。どんなに優秀な医師や看護師がいても、そこだけのサービスでは、高齢者が在宅で暮らすことができません。医療・看護・介護の連携があってはじめて高齢者の方が在宅で暮らすことが出来るのです。
 ヘルパーの仕事は、在宅介護を支える重要な仕事です。従って、ヘルパーが果たしている社会的な役割に相応しい賃金や労働条件を保障しなければなりません。
 不安定な雇用、極めて低い賃金、前近代的な雇用関係、孤立・孤独の中で働いているヘルパーが、人間らしく働き続けられるような労働環境に改善することが重要です。
 そのために、改定介護保険のしわ寄せをヘルパーに転化させるような行為は絶対に認めることはできません。ヘルパーの身分保障を確立し、その仕事に相応しい労働環境を作ることが、利用者に質の高い安全・安心の介護サービスを提供する最大の保障だということを強調しておきます。
 そして、ヘルパーが安心して働ける職場、将来に展望の持てる賃金、高齢者の方が地域で安心して暮らせる街づくりを進めるために、ヘルパー自身が立ち上がることが必要です。


4、確実に進んでいる私たちの運動

 劣悪な労働環境を改善するために、私たちは「一人ぼっちのヘルパーをなくそう」を合言葉に各地域でヘルパー集会を開催してきました。そして、多くのヘルパーさんから「このよう集いを求めていた」「違う事業所で働くヘルパーさんと交流したかった」「集会に参加して、ヘルパーをやめなくて良かったと思っている」などの感想が寄せられ、現在も多くの地域でヘルパーの集いが継続しています。
 この取り組みの中で、地域や職場の中にヘルパーの労働組合が作られ、ヘルパーの働く権利を守り、ヘルパーのスキルアップを目指して奮闘しています。
 東京で始まったこの取り組みは全国に広がり、全国ヘルパー集会を開催するまでに発展をしています。そして、ヘルパーの労働環境改善の取り組みは大きく広がり、社会的な課題になるまで発展をしています。
 孤独と孤立の中で働いていたヘルパーが、全国集会を行えるまでに力を付けてきました。この力で、改正介護保険・介護報酬改定を口実とした、ヘルパーに対する攻撃を跳ね返していきましょう。


5、最後に

 ヘルパーの労働環境改善の取り組みは、はじまって5年目ですが、この間に大きな成果をあげています。さらに取り組みを強めるためには、質量とも強大なヘルパーの労働組合を作ることが必要です。
 私たちの周りには、労働組合が無い事業所が圧倒的に多い状況です。職場で働く仲間に労働組合に参加を訴えると同時に、近くの事業所のヘルパーに、私たちの取り組みへの参加を呼びかけましょう。
 今日の集会を起点にして、ヘルパーになって良かったといえるような労働環境をつくるために奮闘しましょう。  


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2006年2月5日
関東甲信越・東京医労連ヘルパー集会

ヘルパーがいきいきと働き続けられるための取り組み提案

 ヘルパーが、社会的な役割にふさわしい身分保障と、いきいきと働き続けられるための労働環境をつくるために、以下のような取り組みを各県・各地域で旺盛に展開しましょう。

1.2004年8月27日の厚労省通達「訪問介護労働者の法定労働条件の確保について」を、すべての事業所で守らせるために、労働条件を点検し、違法な実態がある場合は即時改善を事業者に求めます。改善がすすまない場合は、管轄の労働基準監督署に指導を求めます。

2.「介護従事者の労働環境の改善を求める要望」をまとめ、各県の自治体に提出し、可能な限り多くの自治体に交渉を申し入れます。

3.少なくない事業所で、介護報酬引き下げの影響を利用者や介護労働者にしわ寄せする動きがあります。一方的な労働条件引き下げは許さず、利用者の生活の支えであり求めである、安心・安全で利用しやすい介護を守る視点から、労働組合として集団的に対応します。

4.介護保険制度改悪の内容と利用者や介護労働者に及ぼす影響を学習し、地域からヘルパーの労働環境改善の取り組みを介護保険制度改善の運動と連動してすすめるため、各地域ごとにヘルパー集会を開催します。

5.2月9日(木)国民集会(中央社保協、医団連、全労連主催)及び、3月4−5日に開催される日本医労連介護労働者交流集会(別紙案内参照)に参加し、全国規模の運動を発展させます。また、2月から5月にかけて連続して行われる日本医労連の国会行動や、「3・10中央行動」に積極的に参加します。

6.これらの運動を支え発展させるために、ヘルパーの労働組合組織を大きく強く広げます。

以上


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