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賃金・労働条件 |
《日本医労連賃金政策2》 いのち守る専門職にふさわしい賃金と評価を (03年12月) 職場は目の回る忙しさ 入院日数の短縮で 医療の高度化に加え、入院日数の短縮などの下で、現場の業務量は急速に増えています。しかし、人員抑制が徹底されており、現場はかつてない忙しい勤務となっています。 交替制勤務でありながら、仕事に追われ、数時間の残業が当たり前という状況です。「日勤が20時、21時。準夜が2時、3時。深夜も昼近くまで。満足に睡眠も取れず、次の勤務に出かけていかなければならない」、こんな状況が全国にひろがっています。 休憩時間も満足に取れず、「食事を流し込むのがやっと」という状況です。委員会や研修で、休日にも出勤しなければならない、そんな実態です。 夜勤・交替制労働は、心身への負担が大きいものであり、本来は常日勤労働者より時短など労働条件をよるくることが必要ですが、かけ離れた実態です。 春闘アンケート結果によると、「とても疲れる」が49・5%と、五割近くを占めました。他産業労働者より十ポイント以上も高い、深刻な実態です。「やや疲れる」も43・5%を占めています。特に看護職では、「とても疲れる」が六割近くに達しています。 この秋とりくんだ「看護師のメッセージ運動」には、切実な訴えが数多く寄せられました。人手が足りず走り回る毎日、そして満足な医療・看護ができず、患者に我慢を強いていることに対する苛立ち、怒りの声が面々とつづられています。 増員でゆきとどいた医療・看護を取り戻すと同時に、私たちの仕事にみあった賃金に改善させることが、絶対に必要です。 広がるバーンアウト こうした下で、健康破壊とバーンアウトが、いっそう広がっています。 「看護現場実態調査」によると、平均年齢35・1歳という若い集団にもかかわらず、慢性疲労が八割(79・0%)、健康不安が七割70・5%)にも達しています。 仕事中にくも膜下出血で倒れたとか、過労死の痛ましい事例があとを絶たない状況です。 「看護現場実態調査」では、人手が足りないために、「十分な看護が提供できている」は、わずか8・2%に止まりました。仕事に追われ、患者に満足のいう看護が提供できない中で、バーンアウトが進行しています。「看護現場実態調査」では、辞めたいと思うことが「あった」が、実に3分の2(67・6%)にも達しました そして、辞めた場合には、「看護とは別の仕事につきたい」23・8%、「働かず、家庭にいたい」16・3%が看護職を離れると回答しています。 医療・福祉労働者への評価を抜本的にあらためさせ、生きがいを持って働き続けられる職場を実現することは、緊急の課題です。 ますます高度化する仕事 問われる専門性 医療内容はますます高度化しており、多くの重篤患者がいのちを救われるようになりました。 それだけに、医療・福祉労働者の仕事も日々、高度化・複雑化しており、細心の注意を払って専門的な仕事をおこなうことが求められています。 入院日数の短縮がすすみ、入院患者の重症化がすすんでいるだけでなく、外来でも重篤な患者の治療がおこなわれています。また、福祉施設や在宅にも医療の必要度の高い患者が増えており、専門的な医療・看護が求められています。 医療・福祉労働者の仕事は、一昔前と比べれば比較にならないほど、高度な専門性が求められています。 そうした実態に見あった賃金にすることが求められているのです。 安全な医療へ 相変わらず医療事故が続発しています。安全な医療の実現へ、医療労働者に求められるものも増えています。「医療事故をおこさないか」という大きなプレッシャーにさらされている現状ですが、安全な医療の実現は本来、患者・国民のだけでなく、私たちの切実な願いです。 医療事故をなくすために、患者との共同をいっそう強め、大幅増員でゆとりを取り戻すことが必要です。同時に、人のいのちを守る専門職として、安全でゆきとどいた医療・看護を実現するとりくみが求められています。 いのちと安全を守る医療・福祉労働者にふさわしい賃金を実現することが動じても必要です。 それは、医療・福祉労働者の生活を守ることに止まらず、国民の求める安全でゆきとどいた医療を実現することでもあります。 高校教員を指標に 社会的な合意 いのち守る専門職にふさわしい賃金への改善は、社会的にも合意されていることです。 ILO看護職員条約・勧告では、資格や仕事内容等を考慮して、「看護職員をその職業にひきつけ、かつ留めておくような水準に決定されるべき」とされ、「他の同様または、同等の資格と責任を負う職業の水準と、同程度であるべき」と規定されています。 制定の議論の中で、看護職と同等の資格と責任を負う職業としては、義務教育教員が共通の認識となっていました。公共的性格の強い専門職であること、また女性労働者が多いことなどが、その判断の基準になっています。 日本でも、私たちの運動によって、1992年に制定された看護職員確保法・基本指針において、「業務内容、勤務状況等を考慮した適切な賃金水準」とすることが明記させたのです。 看護師賃金を軸に 今日、医療・福祉は驚くほど高度化・複雑化してきました。安全な医療への国民的な要求も高まっています。基礎教育も、大きなレベルアップがはかられました。そうした点も考慮すれば、いっそう高い賃金水準とすることが必要です。 そのため、医療労働者の半数近くを占める看護職員の賃金改善を基本にすえます。そして、看護職員の賃金改善をテコに、他職種についても均衡ある改善を実現し、医療・福祉労働者全体の賃金水準を大幅に引き上げます。 高校教員並みへ 日本医労連は、看護師と「同等の資格と責任を負う職業」として、「高校教員を指標」として具体的に設定しました。 高校教員としたのは、ILO看護職員条約・勧告が制定された当時とは比較にならないほど、看護職の仕事が専門化・複雑化しているからです。基礎教育の水準としては、まだ高校教員が高いとは言え、いのちを守る専門職としていっそうの専門性と緊張が強いられていることとともに、特に今日の医療事故問題や過密労働の実態を考えた時、短大卒でも取得できる義務教育教官より一段上の水準として設定される必要があるからです。 急ぐべき中期目標 日本医労連は、「看護師賃金を高校教員並みにする」ことを軸とした「社会的役割にふさわしい賃金」への接近を、急ぐべき中期目標として設定しています。 「看護師の賃金は本来、高校教員ぐらいの水準に設定されてしかるべきだ」「医療・福祉労働者の賃金水準を、いのちを守るという仕事にふさわしく抜本改善すべきだ」という国民的な理解と合意をひろげ、それを保障する国の制度・政策の実現を図る点に運動の眼目があります。 したがって、職場のたたかいで、高校教員並みということをポイント賃金要求などにするものではありません。しかし、現在の仕事内容、職場の実態等をよく論議し、「社会的役割にふさわしい賃金」への接近をはかるという観点から、積極的な賃上げ要求をかかげてたたかうことが大切です。経営者にも、労働者への犠牲転嫁という安易な姿勢をあらためさせ、私たちの奮闘に応える積極的な賃上げをさせると同時に、診療報酬改善など医療・社会保障充実のためのたたかいを徹底して求めていく必要があります。 国に抜本改善せまる 国民的合意づくり 社会的役割にふさわしい賃金への改善は、国民的な合意づくりをすすめてこそ、その抜本的な前進をはかることができます。 国民だれもがお金の心配なく医療・社会保障を受けられるようにする課題や、医療事故防止の課題とも結合させ、医療・福祉労働者が劣悪な賃金と超過密労働に置かれている実態を、患者・地域住民に徹底して宣伝し、大幅増員と賃金水準引き上げの合意形成をはかります。 診療報酬等の改善 医療機関・福祉施設の収入の大半を規定する診療報酬や介護報酬、支援費の抜本改善求めるたたかいを、徹底していきます。 「提言・医療労働に対する診療報酬上の評価について」で明らかにしているように、一対一、一・五対一看護の実現など人員配置のアップとともに、社会的役割にふさわしい賃金を保障する点数設定など、医療・福祉労働に対する正当な評価・点数化を実現することが必要です。減算措置をあらためさせ、安全のコストを保障させる必要があります。 私たちのたたかいによって、国の各種審議会でも、「入院日数の短縮によって業務が過密になっている」「安全のための人とコストの保障が必要である」ことが指摘されざるをえなくなってきています。 国の財政を、医療・社会保障中心に転換させることが、国民世論として広がってきています。 人勧俸給表の抜本改善 医療・福祉労働者の賃金は、他産業以上に人事院勧告制度の影響を受けています。しかし、行政職や教育職と比べて低い昇給幅に抑えられており、医療職の賃金は、不当に低い水準となっています。特にここ数年は、マイナス人勧が医療・福祉労働者の賃下げ攻撃に拍車を掛けています。 人勧に向けたたたかいを、医療産別の賃金闘争の中心課題の一つに押し上げ、運動を強化します。教育職俸給表水準への改善、医療職U・V表の一本化、准看護師の格付け・昇格改善と看護師との体系一本化などを求めていきます。 底上げのたたかい 社会的な賃金水準の引き上げを実現するためには、最賃闘争を強化するとともに、広範な未組織労働者を視野に入れて、底上げの運動を抜本的に強化することが必要です。 条件のある県・地域で、看護師最賃実現のとりくみを積極的にすすめるとともに、医療・福祉労働者の賃金水準を引き上げる全国的な最賃闘争、最低規制求めるたたかいを具体化していきます。 |
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