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賃金・労働条件 |
職能資格給・成果主義の問題点と結核予防会労組の闘い 1、初めに 職能資格給、現在は「成果主義」となり日本でも広く導入されて来ています。成果主義の導入の第一陣は1993年〜95年ごろに制度を導入しており、日本企業のざっと7割が管理職への成果主義を導入済みという状況です。 そうした中で導入が進んでいなかった、病院、学校、農協、運輸通信、マスコミなどにも、徐々に広がりを見せています。事実、医労連加盟の組合の中でも全国的に導入が進んで来ています。聖路加国際病院を始め、全国でも規模の大きな病院が導入されているという傾向があります。 とりわけ、人事院勧告準拠の病院やその地域での有名大病院に対しては、コンサルタントも積極的に動いています。規模が大きいことと人事院勧告準拠などの年功序列型賃金が制度として定着している病院の方が、導入による人件費の削減効果が大きいというメリットがあります。 今日のように、医療改悪、総医療費の抑制政策、診療報酬のマイナスなど厳しい医療情勢となれば、コンサルタントは診療報酬がマイナスの中で年功序列型賃金ではやっていけないこと、良い人材を確保して、少しでも人件費を削減したいのであれば成果主義賃金を導入することが不可欠だとして、経営者を誘惑してきます。とりわけ人事院勧告準拠の賃金体系の病院では、これまでは人事院勧告と同じ内容を行って来ただけで、自前の賃金体系表を作成することをしていないため、こうした誘いにのりやすいという側面があります。 そこで「成果主義」とはどういうもので、働く者にとってどういうメリットとデメリットが生まれるのかということをしっかりと見極める必要があります。 2、成果主義賃金の問題点 成果主義の導入は、簡単に言えばコンサルタントに頼んで何千万円というお金を払えば電話帳のようにあついマニュアルや評価基準が出来上がって来ます。しかし、現実にはそれを使いこなせる組織はありません。厳密に基準を作らないと成果主義が導入出来ないというコンサルタントの誘い文句にのれば、コンサルタントだけが潤い組織も制度も全く動かないものになってしまいます。 そもそも医療では厳格な成果を定めることは難しく、仕事の内容を数値に置き換えるは困難な職種であるます。また、マニュアル化することも難しく、逆にマニュアルに捕らわれ過ぎても上手くは行かないという現実があります。マニュアル化出来ることにも限界があり、評価基準を細かく決めてしまうとかえって業務は回らなくなります。評価基準を細かくしすぎる事にはあまり意味はありませんが、評価を曖昧にしてしまうと人によって評価が大きく変わることになります。導入に際してコンサルタントや経営者は、「公正・公平な評価をする」「頑張った人を評価する制度」「若い人には有利な制度」等々、耳ざわりの良いことばかり言います。実際には、個人の責任や責務が追及されることや賃金、ボーナス、昇給昇格や時間外手当にも反映し年収ベースでの抑えることが出来、最後には退職金にもはねかえることとなるので、生涯賃金にもはねかえりことになり総人件費を抑制出来ることとなります。 評価については、コンサルタントが提案することになりますが、現状に合うものとは限りません。能力主義をいち早く導入した聖路加国際病院では、看護師に対してテストを行いその点数と評価で資格等級を上げたり、管理職にしたりしています。そのテストの内容を紹介すると、「マクドナルドとモスバーガーの経営戦略をのべよ」「介護保険で負け組となったコムスンの問題点を上げよ、あなたならどういう経営戦略で建て直すか?」という業者テストが行われています。これが、どうして日常の看護業務に役立つのでしょうか? 聖路加には医労連の組合もありますが、その組合員が業者テストで98点という高得点を取り、さらに職場の同僚からの推薦がされても主任にすらしないという現実があります。病院は、昇格させない理由として「総合的に判断して」と説明しています。聖路加国際病院に職能資格給を導入した楠田 丘氏は、医療では職能資格給はほとんど成功していない、成功しているのは聖路加くらいのものだと言っている聖路加ですらそうした実態です。 すでにご承知通り、成果主義賃金の大きな問題点は、「評価システムに対する不信感」「評価をする管理職の問題」「部下と管理職の評価の違い」「評価は情実である」「同じ仕事をしているのに評価が違う」「評価が主観的で、こじつけ的要素が多い」「上司によって評価が違う」等々が上げられています。先の聖路加の例でお話すると、全く同じことをしていても部署が異動となり上司が替わってボーナスの評価があがったということがあります。 昨年、7月上旬に沼津市で行われた富士通の役員合宿では、「成果主義なんてやめてしまってはどうか・・・」「目標達成にこだわるあまり、高い目標を設定しなくなった・・・」「5年、10年かけてしこむような仕事を、誰もしなくなった」「このままでは富士通スピリットが死んでしまう」等々、口々に否定的な意見が出されました。富士通は、1993年から大手企業としては最も早く本格的な成果主義を導入した、いわば人事制度の先進的企業といえるところで、そこの幹部社員ですら不満や危機感を抱かせる制度となりえるものです。 制度上の問題点を富士通の例で見てみると、最初に導入する制度は相対評価となるということがあります。例えば4段階に分けるとSA(10%)、A(20%)、B(50%)、C(20%)というふうに分けられ、給与・ボーナスひいては退職金まで差がつくことになります。どんなに頑張ってもこの比率の中で分けられるために、必ずCという人が制度上必要になります。労働組合的に考えれば、差別の温床にもなりかねず、現に差別争議も多く起きており殆どが労働者側の勝利という点からも、いかに経営側が悪用出来る制度であるかということがわかります。 また、こうした問題を改善するために絶対評価に変えて比率を設けないことにすると、逆にAランクの職員が増えるという現象が出て来ます。評価する上司は、部下に憎まれたくないので厳しい評価をしなくなる。評価される側も短期的に成果が上がる仕事に重点を置き、「目標を達成した」という形を整えて評価が高くなるということが生まれてきます。こうなると、経営者側とすれば成果主義を導入した意味がなくなります。さらに、個人の目標を低くするために会社全体の目標も低くなるという結果につながります。時間がかかることや、成果が現れにくいこと、大変な労力のかかることを敬遠するということにつながって、長期的な戦略や研究開発などが出来なくなってしまいます。 評価を受ける側としては、「結果」は誰にでも明快にわかるが、「プロセス」や「行動様式」は見えにくいということがあり、その結果として評価は曖昧になることで、情実評価がまかり通るという危険があります。 3、「成果主義賃金」の間違った運用と落とし穴! ここで、これまでの「成果主義賃金制度」が間違った運用がなされて上手く行かない例を検証してみましょう。 第一に一番多い例は、「金で人を動機づける」ということがあります。厳しいノルマを課したり、極端な業績主義、金で釣るといった方法に終始すれば、違法行為に手を染める社員が出てきてしまい、最近ですと雪印や日本ハムといった事にもなりかねません。まさに、組織自体を駄目にしてしまう危険性が高くなります。 第二に「成果主義は個人主義がベース」にしてしまうことがあります。一律に個人主義の枠にあてはめてしまい、責任を個人に押しつけてしまえばチーム医療といったことは成り立たなくなります。患者さんを診て、治療・看護・ケアーすることはいち個人では出来ません。また、個人の努力が足りないからという理由で、賃金・ボーナス・昇格といったことにまで影響する事になり、みんなで何かを一緒にやるということや、仲間の仕事を手伝うこと、誰かの仕事を引き継いでやるということはやれなくなります。それだけでなく、病院の業績の責任や制度上の問題まで個人に負わされるはめにもなりかねません。 第三に「評価分布を決めてしまうと」ということがあります。様々な業種がある医療では、一律の評価分布の中では差がないのに無理矢理に差を付けることになったり、逆に差があるのに抑えられて差がつかないという現象が起きます。例えで言うと、看護師の評価を一つにしてしまうと、病棟(色々な科がある)も外来も内視鏡も手術室も訪問看護も全て同じ基準とすることになり、現実には公平・公正な評価はなされません。 第四に「目標を何でも数値にする」ことになれば、数値に表せないことは評価されないことになります。特に医療は、数値に表せないことが大変多い仕事でもあります。数字万能主義は短期目標だけに職員の意識が向いてしまう中での弊害が生まれてきます。患者さんや家族が求めている、心の通う質の高い医療の提供が行われなくなる可能性があります。 第五に「評価基準を細かくつくる」ということも、コンサルタントに振り回されて高いコンサルタント料を払い続けて、誰も使えない制度となりかねません。 こうしたことが、「成果主義制度」を導入している多くの企業で上手くいかないこととしてマスコミで報道されているところです。こうした中でも病院経営者は、「厳しい医療情勢を乗り切るため」として成果主義の導入を強く進めて来るでしょう。しかし、今の厳しい医療情勢を「成果主義」の導入では乗り切れません。現状の成果主義では「個人の成果を数字で厳密に測って金で釣る、米国型の賃金体系」となってしまっています。また、導入するだけで職員が生き生きと働き出すという、万能薬でもありません。コンサルタントに高いお金を払って仕組み作りに血道を上げても何の意味もありません。経営者が今しなければならないことは、自分の病院の目指すビジョンや患者さんや家族、国民の求めに応えて医療を提供するためにどうするのかということを、明確に経営者が打ち出すことが一番大切です。 はたして今の経営者に、「何のために成果主義を導入するのか」「何をもって『成果』と定義するのか」「病院の目指す姿は何なのか」という大企業でも明確に出来ない極めて難しいことを明確に打ち出せるのでしょうか・・・? 4、労働組合の役割 成果主義賃金を導入するということは、総人件費の抑制だけでなく労働組合の団結する力や結束を揺るがすことが出来るという労務管理上の大きな利点があります。 経営側は、「評価」を武器に労働者を容易に分断することが可能となります。これまでも述べた通り、現状では情実的な判断がまかり通っているという側面からも、上司に気に入られなければ資格等級が上がらなかったり、成果が評価されないという事になるからです。この点を利用して、経営者は当然のごとく労働者を分断する手段として多くのところで活用されています。組合は、こうした問題点と狙いを広く学習や教育宣伝で組合員に知らせて闘う準備をする必要があります。 また、経営コンサルタントが評価基準を作成する事になりますので、賃金原資の分配は経営コンサルタントが握る事になります。制度を作成している経営コンサルタントには、経営者も下手に口だし出来ないなんて事にもなりかねません。組合も、団体交渉等で経営側と交渉しても、経営者には実質的には賃金・ボーナス・昇級・昇格は判断出来ないということにもなりかねず、団体交渉の形骸化につながることになります。 さらに、個人の評価が優先されることになりチーム医療は崩壊、制度の導入の中では職員の労働条件を引き下げとなることなど、組合への結集はさらに弱くなると言わざるを得ません。 この制度の大きな問題として、賃金のモデル化が出来ないことや働いている者同志が「評価」を優先させる事になれば、仲間同士の信頼が損なわれ結果として仕事も上手くまわらなくなります。そのことは、組織にとって大きなデメリットとなることに気づいたところは、「成果主義賃金」の廃止も含めた抜本的見直しを進める状況にあります。 しかし、コンサルタントは、総人件費の抑制が出来ることと同時に、組合の弱体化も達成出来ること、経営者自身の収入アップにもつながる一石三鳥になることについて大きくアピールして、厳しい医療情勢を前に揺れる経営者はこの制度に飛びつくという図式が広がりを見せています。 ここで労働組合は、職員の賃金・労働条件を守り、患者さんや家族に安心して良い医療の提供が出来るように職能資格給・成果主義賃金の問題に正面から取り組み導入させない取り組みを進めることが必要です。 5、結核予防会労組の闘い 結核予防会は、赤字体質を脱却するために平成6年(1994年)〜平成8年(1996年)の間に財政再建3ヶ年計画に取り組みました。その中で、労働者に対してはベアゼロという処置を取りました。病院についても効率化を目指した閉鎖を計画、診療所も効率化を目指して閉鎖・統合を行いました。職員の定期昇給55停止や給与体系の見直しなどを労働組合に提案して、委員会に参加して議論をすることを提案してきました。 また、経営側は、楠田 丘氏、斎藤 清一氏、(財)社会経済生産性本部などの経営コンサルタントによる講演会を3回行い、職員に対するインタビューなども進めて来ました。 組合は、秋年末闘争が終り一段落したところで、中央執行委員会は大会でも確認した「職能給」についての組合員投票の準備を進め、学習会を行いました。 講師には、労働総合研究所の宇和川事務局長にお願いして4回の学習会を以下の日程で行い、一般職員にも参加の呼び掛けを行い延べ160名が参加をしました。 日程 11/21 東村山支部14名 11/27 都 内支部 29名 28 清 瀬支部72名 12/ 3 清 瀬支部 45名 参加者合計160名(組合員対比 53・3%)
(1)学習会での「職能資格給」の内容は… 講師(労働総合研究所の宇和川事務局長)の話のポイントをまとめると…、それまで劣悪だった医療労働者の賃金は、37年前の全国的な病院ストライキにより診療報酬の大幅改定を勝ち取り、賃金・労働条件が大きく改善されて来ました。同時に、賃金体系も国家公務員準拠を多くの病院で取り入れられました。 70年代…80年代半ばまでは診療報酬は右肩上がりに伸びて、医療・福祉・社会保障も大きく改善されて来ました。しかし、高齢化社会を迎えるにあたり伸びていく医療費や福祉・社会保障の切り捨てに政府・厚生省は取り組むこととなります。政府・厚生省は総医療費抑制政策をかかげ政府の負担を削減し患者、国民に負担を押し付ける政策を徹底して行って来ました。 こうした中で病院は生き残るため、リストラ「合理化」や派遣社員の導入や下請化などをおこなって存続して来ました。しかし、政府・厚生省の必要な医療切り捨て策により民間病院や国立病院など全国で1000以上の病院が無くなっているのも現実です。 医療では、患者さんを診ることや患者サービスは、誰か個人だけでやれるものではありません。患者さんと24時間、毎日一緒にいることは当然出来ないので、皆で診て・看護するチーム医療で普段仕事をしています。 また、どんなにがんばっても保険医療では、同じ点数しか来ません。逆にどんなにがんばっていても患者さんに必要なものでも、政府・厚生省の政策や中央医療審議会が認めなければ、これまでもそうであった様に切り捨てられて来ました。 経営コンサルタントが強調する「皆でがんばって良くなる…」という論理は、診療報酬による今の医療制度の中では決して収入増にはつながらず、儲けた分を皆で分けるという論理は成り立ちません。力を公平に判断して成績による配分をするということですが…。現状にチーム医療を例えて言うと、5人ずつのチームに分かれて綱引きをして勝ったチームの「誰がどれだけの力を出して、それがどう勝敗に影響して勝ったのか…」ということを公平な判断により、正確に成績をつけることは絶対に不可能です。そこには必ず「好きか!嫌いか!」という論理が必ず入るのは感情の動物でもある人間ならあたりまです。(例‥人間はどんなに冷静な人でも85%は感情で動いている…と言われています。) (2)問題点をつかみ現実にどうなるかを見極めることが重要 今の賃金や今の態勢に満足しているという人は、本来少ないのがあたりまえです。コンサルタントは、そうした感情をうまくつかみ、いかに新賃金が夢のある・展望のある賃金制度であるかのように説明しますが本当にそうなんでしょうか…? 冷静に考えて、新賃金になったからといって賃金原資が増えたり、「みんなが良くなる賃金」となることはとても考えにくいことです。一般的に経営者は、2割〜3割の賃金原資の支出を押さえられるような提案ではしないとも言われています。結核予防会の基本給与でみると、約35億円位と考えて計算すると7億〜10億位の人件費削減を見込んだ提案をしてくることになります。これまで、人事院勧告準拠をかたくなに守って来たのはむしろ経営者の方であります。考えてみれば、人事院勧告にたよって独自の賃金構想や人件費等に対する経営戦略にかけていたとも言えます。 しかし、『職能給』ありきと言うのも、肝心で大変な労務・人件費の管理をコンサルタントに全てまかせ、経営者自信は楽に人件費の大幅削減が出来る安易な方法にたより、これまで同様経営責任を逃れることも出来、人件費の大幅削減が成功すれば一石二鳥にも三鳥にもなるという狙いがかくれている事を見逃すことは出来ません。 (3)聖路加国際病院と同じように導入されるとしたら…看護婦の生涯賃金の差額は約2880万円にも…! 結核予防会に講演に来た講師も引き合いに出し紹介していた聖路加病院で導入されている『職能資格制度』を看護婦でみてみると…(以下対比表参照)。 資格等級基準を9段階に分け(Jー2・3、Sー4・5、Eー6・7、Pー8・9・10) 職位と昇進基準は、スタッフ(Eー6級以上在級者)、副婦長(主任)(Eー7級以上在級者)、婦長(Pー8級以上在級 者)、副部長(Pー8級以上在 在級者)、部長(Pー10級以上 在級者)という風に分かれてい ます。 この他に昇格基準や考課者・ 被考課者(スタッフのみチーフ マネージャーの2名に考課され、 他は上司のみ考課)が決められ ています。 資格等級ごとに習熟要件(臨 床実践・教育・管理等)、修得 要件(知識やキャリヤラダーの レベル…修得要件の一要素)、 研修・能力開発プラン(研修コ ースの受講、学会への参加、看 護協会の専門看護・看護管理コ ースへの参加、専門誌の購読等) が条件として課せられます。 また、最大の問題は面接制度 によって成績考課の査定が行わ れるということです。目標面接 ・中間面接・育成面接をしてい ますが、面接は上司が行います ので、必ず好き嫌いの査定は生 まれます。 評価は皆が良ければ、皆の査 定が良くなるというわけではな く必ず差別や選別がされます。 聖路加病院の賞与査定を例に していみると(以下参照)、競争 原理を理由に必ずマイナスとプ ラスの人をつくりますが、経営 者は成績加算の為に余分な人件費を出す必要はなくなります。 これを結核予防会の場合であてはめて見ると、年間5・2カ月のボーナスで平均賃金で算出すると10%で179,954円となり、マイナスとプラスの一番の差額が20%となりますので年間のボーナスの査定で359,908円の差額が生まれます。年収で大きく切り下げられる50才台半ば以降に、さらに査定による引き下げが行われれば、年間で200万円近い収入ダウンとなり、生活設計はズタズタにされてしまいます。 区分基準 5% 20% 50% 20% 5% 査定ランク 1 2 3 4 5 係 数 1・1 1・05 1・0 0・95 0・9
これまで説明した通り、職能給の導入は総人件費の大幅削減です。リストラ合理化・派遣・下請導入の先には、残された医師・看護婦職の賃金削減と中高年・中間管理職の賃金カットが最も大きな課題です。聖路加では医師も職能給が導入され、他では年俸制の所もあります。患者さんに良い医療を提供するには、職能給はいりません! (2)「職能給」導入についての組合員一票投票の結果と中央執行委員長総括 1、一年前の97春闘時に経営側より組合に対して、職能給導入の為の検討委員会への参加の申し入れがありました。この検討委員会の性格は、職能給導入を前提としたものである為、職能給そのものがどの様なものなのかを中央執行委員会でも議論をおこないました。又、この件に関しての取扱いについては、中央執行委員会の意見や考えだけで方針・結論を出さず、定期大会での方針提起と討議をふまえて、全組合員が学習し、認識を深め、全組合員による一票投票で結論を出すとの方針を確認し取り組んで来ました。 2、1月21日(水)から行った投票結果は、組合員総数300名、投票総数266票(88・67%)、導入に賛成27票、反対232票、その他7票という圧倒的多数が職能給導入反対という結果となりました。投票率88・67%という結果は、組合員一人一人の職能給に対しての、関心の深さを物語っている事の現れであると思いました。近年では、これ程高い全組合員の意見集約が出来た事はありませんでした。 3、次に投票結果について総括したいと思います。組合員総数の4分の3以上が職能給導入に反対した事は、最も賢明な道を選択したと考えています。その理由の第一は、従来の賃金体系そのものを否定する職能給は、私達組合員一人一人にとって、非常に厄介な「しろもの」になるからです。 これは同一年齢、同一職種、同一経験の労働者の間において経営の尺度による人事考課という評価基準のもとで、賃金の差別が生じることになるからです。これによる労働者の競争意識が生れ、現場の集団医療体制(チーム医療)を行っている現場では、決して良い結果が生れないからです。又、一方人間が評価する人事考課そのものが、評価の基準が非常にあいまいなものとなっています。評価そのものが必ず順位をつける結局相対評価(絶対評価の様に頑張ったら全員同じ評価にはならない)では、では、正当な評価にはならず結局「好き・嫌い」という感情が評価に反映することになります。 第二の理由は、組合の活動が非常に困難が生じます。労働組合とは労働者の要求に基づいて、労働者の「生活と権利」を守る『砦』である事は申すまでもありません。各々の労働者が人事考課によって賃金差別が生れれば、賃金を上げる・評価を上げる為に考課者(上司)の評価を上げることだけになりかねません。 第三の理由は、結核予防会を民主的に発展し、強化する為に大きな障害になることが懸念されます。これからの予防会では、長期目標・計画(少なくても10年目途)を確立し、短期・中期計画にそって全職員が一丸となって活動出来るような状況にすることが、早急に求められています。職員を賃金によって差別・分断することは、職場の不満を力で押さえ、将来展望に不安が蔓延し労働意欲を後退させるだけでなく、全体で団結し・目標に向かって進むということが出来なくなり、経営にとっても、職員にとっても決してプラスには作用しません。 4、私達の目指す理想の賃金体系はどの様なものでしょうか?私は、結論として理想の賃金体系は存在しないし、創造するにしても非常に困難で不可能であると思います。それは、賃金は労働者一人一人の生活実態(労働力の再生産)に必要な経費額から決まるからです。 現在の予防会は、年功型賃金体系です。就職から定年まで一定の見極めが出来、特に欧米より日本で発達した給与体系であります(日本は年功型賃金体系にすることにより労働者を長く企業に縛りつけて来ました)。ベースアップは、39年前の1959年の春闘後より人事院勧告準拠となりました。この結果、経営側にしてもベア問題や春闘対策として一定のやりやすさと厚生省からの天下り職員の格付け等メリットも大きかったと考えられます。 しかし、人事院勧告の内容や国家公務員の置かれている状況は決して楽なものではありません。現在でも国家公務員のスト権は、国際的な基準であるILO勧告を無視して、政府により剥奪されています。人事院勧告の内容もここ数年は1%前後を推移しており、働く者の生活を無視した低額の勧告内容が続いています。 予防会では、数年前から人事院勧告が出されてもボーナスや諸手当の勧告がなかなか実施されなかったり、財政再建計画のもと3年間のベア凍結が強行されるという、低額勧告の内容がさらに削減され、押さえ付けられて来ました。私達組合は、ストライキや様々な闘争に取組、昨年の97春闘で、1.7年分のベアは人事院勧告準拠という形で回復しました。 現状では、97年度の人事院勧告(1.02%)が出て、すでに国家公務員は実施されています。組合は、春闘で人事院勧告2・3%のベアを必ず回復し、同時に4万円以上の賃上要求をかかげて闘いました。なぜならば、私達の生活は昨年6月より実施された消費税5%への増税等、今年1月の経済企画庁の発表にもある通り、消費者物価は昨年より2%上昇しており、ますます苦しくなっているからです。 5、今国会では労働法政の改悪(裁量労働制の導入…ノルマ制による残業未払い、サービス残業の合法化)を初め年金改悪や30兆円にのぼる銀行救済策を用意されています。また、安全保障の名の元に、新ガイドラインに関わる法整備やアメリカの戦争を手伝う為、憲法9条を含めた大幅見直しを進めようとしています。 まともな医療の提供や、まともな病院運営をしていく為には大幅な診療報酬の改定が必要不可欠ですが、今年見込まれている、約3%の診療報酬の改定では到底間に合いません。診療報酬の大幅改定を求める運動と福祉や社会保障制度の切り崩しを許さない闘いがますます重要となって来ます。 今後も組合は、結核予防会が国民に信頼され「いつでも・どこでも・だれでも」が安心してかかれる医療機関を目指し、医療・福祉・社会保障を良くする為に、先頭にたって奮闘していきます(98年2月17日「あけぼのbP104」机 中央執行委員長 談より)。 (3)「新人事制度」「成果主義賃金制度」との結核予防会労組の闘い 経営は昨年7月15日より、医師に対して年俸制を導入しました。医師に対しては説明で今後、管理職や一般職にも導入すると説明してきました。組合は、医師の年俸制についても導入に対して反対して、意見書も導入反対という意見書を提出しました。 第3回経営懇談会を10月15日(火)に、組合側中央執行委員6名と専務を初めとする経営側5名で行い、「賞与について」「新規事業について(ガーデンヒル新山手)」についてと「新人事制度」について説明を受けました。 新人事制度について・・・ 経営 7月15日より医師の新人事制度がスタートしました。今後の人事制度のために10月15日よりワーキンググループを作り、人事発令した。三つのグループで今後の作業を進めて行く。一生懸命やった人に、フェアな評価をする制度とするために検討していく。 組合 人選にあたっての基準は何か?責任者や会議の招集、業務としての扱いはどうなるのか? 経営 もともと医師のワーキンググループにプラスした。医師のワーキンググループだった人は、1のグループと3のグループに移ってもらった杉木さんと河口さんです。 グループの責任者や長は特に決めていない。召集は職員課で行う。前回はその時々に作業班の中で決めてもらっていた。会議の議事録はなくフリーで意見を出してもらっている。結果についてはまとめて報告してもらっている。特に職員課などの職員は入っていない。会議が時間外になれば、時間外手当を支給(管理職以外)、出張にあたれば出張手当を支給している。 その後経営は、昨年12月24日の合同会議で管理職、一般職に対する「新人事制度説明会」を開催することを決め一方的に通達しました。組合は、このことについてこれまでの経緯を無視するものであり、労使慣行からもそぐわないとして、1月7日に以下の抗議文を提出して文書回答を求めました。 2003年1月7日 成果主義賃金説明会に対する抗議文 組合は成果主義賃金の導入に対して反対の姿勢であることを再度ここに申し入れ致します。成果主義賃金反対の内容については、医師の年俸制導入に際して、就業規則改定の意見書でも述べた通りです。 今回、経営側が2月から管理職と一般職に対しての説明会を行う通達を出したことは、一方的に導入を進める姿勢を表しており、これまでの労使関係と経緯を無視するものであり断固抗議いたします。1997年に経営側より提案された「職能資格給」についての説明会開催にあたっては、組合へも出席の要請がなされました。組合も経営の提案に対しては、真摯に受け止め組合員に対して一票投票を行い導入に対して反対という結論に至り、その結果、経営側も導入を行わないことを時の浅野専務が明言しています。 昨今の厳しい医療情勢を無視するものではありませんが、成果主義の導入が妙薬となって厳しい現状を乗り切れるものでは到底ありません。また、賃金や労働条件は長年の労使関係により築きあげたもので、労働組合が一方的に作ったものではなく、経営側も十分承知し協定した上で今日まで運用されてきています。賃金は、全職員に関わる問題であり生活する上での基本的条件となっています。また、超過勤務手当、夜勤手当、管理職手当、ボーナスや退職金まで跳ね返りのある生涯賃金の基本ともなっているものであり軽々に変更出来るものではありません。まして、ワーキンググループによるごく一部の職員の論議と意見だけで決められるものでもありません。賃金や労働条件は組合との協定で成り立っているものであり、組合は経営側からの一方的な変更を認めることは出来ません。成果主義賃金の問題については、組合と協議して合意の上ですすめることを要求致します。また、以上について文書で回答することを合わせて要求致します。 以上 中央執行委員会では、@何故、人事制度を変えるのか意義と理由を明確にさせる、Aこれまでの経緯と労使関係を踏まえた誠意ある対応を要求する、B抗議文に対する説明と回答を求める、C賃金問題について原点に立ち返り話し合うことを要求することを確認しました。 組合から申し入れた経営懇談会は、1月28日(火)、17:30〜、本部3階小会議室にて行われました。経営側からは、議題として@新人事制度について、A診療報酬減免制度について、B福利厚生についての3点が出されました。 組合は、その場で執行委員会で論議した4点と、組合の姿勢について抗議を含め申し入れを行いました。抗議文でも述べた通り、一方的な導入を許さず、うやむやにして導入するようなことは認められないことも合わせて申し入れました。 第4回経営懇談会を1月28日(火)に開催。組合側は中央執行委員四役等7名と専務を初めとする経営側4名が出席しました。議題は1.診療報酬減免制度について、2.新人事制度について、3.福利厚生について.4その他について話合いました。「新人事制度」に関する議論の内容は以下の通りです。 新人事制度について・・・机委員長が経営の一方的な説明会開催に抗議! 経営は:初めに、総務部長より説明会の日程について報告が遅れて申し訳ないとされた後に、専務より導入意義について説明されました。 専務より・・・公務員も能力給導入の方向にある。厳しい経済状況にある中では人事制度の見直しをする必要がある。経営は、人事制度の見直しだけでなく、色々なことを同時に進めて経営の活性化を図っている。 給与改正にあたって一番の問題点は、「人事評価が公正でない」「(勤続年数が)長ければ、長いほど給与がアップする(年功序列型賃金)」の2点である。現状の賃金体 系では、一生懸命働き、予防会に貢献している人に対して(給与の)差をつけることが出来ない。 新人事制度では、公正に貢献度を評価して他の人よりもアップさせることが出来る。これは、一般職も管理職も同様。そうしたことにより、今後も発展して生き延びていくことが出来る。これまでの様に、収益が拡大していく状況になく、今後は努力をしても拡大しない限られた報酬の中で評価して公平に配分するシステムが必要になって来る。 公務員賃金も削減される状況の中、予防会でも公務員同様の制度改善を行って行く必要がある。(世間一般でも)トヨタはベアゼロ、ホンダは定期昇給無し、日本の賃金は労働分配率70%を越え、欧米よりも高い世界最高水準となっている。 予防会では、診療報酬マイナス2.7%による収入減、健保本人3割負担による患者さんの減少による収入減、介護報酬が見直され(老健)施設はマイナス4%となり約2千数百万円の減少による収入減、検診事業も結核検診の削減や競争入札によるダンピングにより収入減、本部ビルのテナントの日鉄日立の退去により30%が空室となるが2003年問題(貸しビルの供給過多問題)により賃貸料のダウンとなり収入が減少、結核研究所の補助金カットとマイナス要素が非常に多い。 新規事業としては、新山手病院の循環器センターの開設。ガーデン新山手の開設(リスクの低い新規事業)。第一健康相談所では健康増進法の先取りをした様なモデル的診断事業を開始。財政基本計画を見直す中で基金を不動産簿価とする評価の見直しをして社会福祉事業団等からの借り入れを完済して利子負担を無くすことに取り組む。SPCによる材料管理。複十字病院にオーダーリングシステムの導入を行っていると説明しました。 余力のある内に人件費に手を着けなければいずれ生きず詰まる。決して「職員いじめ」ではなく、働く人と働かない人との配分を変えるということと説明しました。 組合は:机委員長が経営側の導入の「意義」は聞いたが、賃金、労働条件に関わる問題は、対等の立場で話し合い合意の上で進めていくことが法律にあり認められていることである。今回、経営側が進めている「新人事制度」の説明会は、労働組合と話し合いもせずに一方的に進めている。これまでの労使関係の経緯からも「ルール違反」であり、労使間の信義からも外れており強く抗議する。中身の話を聞く前に、抗議文に対する回答と謝罪を文書で要求しました。 また、経営は、説明会の参加を業務命令(施設によって多少異なる)としていることからも・・・まず組合に「新人事制度の意義(導入の主旨)」を説明して、合意の上で進めること。賃金・労働条件に関わる問題は、団交等交渉の場で話し合うべきものであり、今回の様に決めたあとに承諾を迫るのは「ルール違反」であり、見直すよう要求しました。 経営は:「新人事制度」を決定するわけではなく、あくまで「説明」しますということ。3月25日〜26日には結核予防会大会があり、予算の準備もあり作業日程的の関係でこうなった。労使は、イコールパートナーではあるが、承諾や審議がないから話し合わないというものではない。やり方については口を出してもらいたくない。 組合は:日程優先の経営側の姿勢に対して強く抗議して、机委員長より@抗議文に対する文書回答、A労働組合に対する(時間内保証)説明会の設定・・・説明は経営者自身がおこなうこと。を要求して、日程について提示するように改めて要求しました。 経営側も@導入の主旨・・・専務・総務部長が説明、A制度の技術的なもの・・・コンサルタント依頼予定として、日程について明示することを約束しました。 以上の議論のために、当日「新人事制度」についての資料は受け取りましたが説明は受けませんでした。 こうした中、中央執行委員会は、組合員に対する「成果主義賃金」についての学習、職場での論議を進めるために中央執行委員会主催の「学習会」を開催することを決定。以下の日程でおこないました。また、組合員の要望に応じ支部独自の学習会の設定にも対応しました。 また、学習会にあたっては、参加者の把握を役員会で行いました。参加にあたっては、中央執行委員会より交通費(実費)、食事代(1,000円)を支給。所属して支部以外での学習会に参加出来るようにきめ細かい対応をとりました。 また、中央執行委員会では今後の進め方として・・・ (1)経営の説明会へも参加して組合員自身が問題意識を持つこと。 (2)職場討議を行うことと、職場ごとのミニ学習会も設定して理解を深め自分自身の問題として受け止め問題意識を持つこと。 (3) 役員体制の強化と組織体制の強化を進めること。 (4) 今後の導入に関わる闘いでは、組織の数が大きな力となることを認識して、組織拡大を最大の課題として未組合員への拡大の働きかけを強化すること。 (5) 春闘の前段の闘いと位置づけて、春闘での要求前進につながる闘いとなるように役員が先頭となって積極的に取り組むこととしました。 また、組合員にも春闘に向けてしっかり学習して、一方的な導入は許さないために団結して頑張ろうと訴えました。 経営側からの組合への正式な説明会を開催することを要求して、役員の勤務扱いを保障して2月10日(月)、午後3時〜、結核研究所 講堂にて開催されました。 説明会には、経営側 専務、総務部長、企画・情報部長、職員課長と組合側22名【中央執行委員:参加者数 10名(日勤7名、休み等2名、他1名)、清瀬支部 役員:参加者数 12名(日勤5名、休み等7名)参加者数 合計 22名(日勤12名、休み等9名、他1名)】が参加をしました。 専務より導入の意義が説明され(経営懇談会の内容とほぼ同じ)、制度については総務部長から説明がされました(制度については経営側の説明会の内容と同じ)。 中央執行委員会は、こうした動きに対して「成果主義賃金」学習会を開催して、私達働くものにとってどういう制度なのか?どういう問題点が潜んでいるのかを学習しました。学習会は、以下の日程で開催して延べ262名(88.96%)の参加者がありました。春闘前段の取り組みとして、組合員の意思統一や情勢を含めた学習となり今後の大きな力を蓄えることができました。 また、学習会にあたっては資料作成と講師を書記局がつとめ、参加者の把握については役員が行いました。参加者には、食事代1,000円と交通費を中央執行委員会から支給しました。 「成果主義賃金」学習会の日程と各日の参加者数 1月21日(火)16:00中央執行委員会(中央:10名)。 22日(水)13:00清瀬支部役員会(清瀬:13名+齋藤)。 17:30清瀬支部組合員(清瀬:22名、神田:1名+齋藤)。 29日(水)17:30東村山支部組合員(東村山:18名+齋藤)。 2月 3日(月)17:30清瀬支部組合員(清瀬:22名+齋藤)。 7日(金)17:30都内支部組合員(神田:2名、一健:25名、渋谷:7名、 +齋藤)。 10日(月)17:30清瀬支部組合員(清瀬:22名+齋藤)。 12日(水)17:30東村山支部組合員(東村山:5名+齋藤)。 19日(水)17:30清瀬支部組合員(清瀬:16名+齋藤)。 24日(月)17:30清瀬支部(3A・2A病棟等)組合員(清瀬:8名+齋藤)。 27日(木)17:30清瀬支部(3A・2A病棟等)組合員(清瀬:10名+齋藤)。 3月10日(月)17:30神田支部&一健支部組合員。(神田:2名、一健:6名 +齋藤)。 6月30日(月)18:30清瀬支部組合員(清瀬:35名+齋藤)。 7月 9日(水)17:30清瀬支部組合員(清瀬:25名+齋藤)。 学習会後の対応として、@経営の学習会へも参加して組合員自身が問題意識を持つこと。A職場討議を行うことと、職場ごとのミニ学習会も設定して理解を深め自分自身の問題として受け止め問題意識を持つこと。B役員体制の強化と組織体制の強化を進めること。C今後の導入に関わる闘いでは、組織の数が大きな力となることを認識して、組織拡大を最大の課題として未組合員への拡大の働きかけを強化すること。D春闘の前段の闘いと位置づけて、春闘での要求前進につながる闘いとなるように役員が先頭となって取り組みました。 こうした結果、春闘の団交の中では「新人事制度」に対する意見が噴出しました。団交に参加した組合員から、「新人事制度」導入に対する反対意見や不満、他での例など意見が噴出しました。意見@新人事制度は導入してもらいたくない。導入した他の病院では辞めた人が多いと聞く。給与が低くても楽しく仕事をしたい。病気になれば、給与もボーナスもなくすということでは、(一生懸命働いて、不幸にして病気になった一番厳しい時に)生活出来なくなる。職員の意見を聞いてもらいたい。意見A個々人の個性があり、チーム医療の中ではそれが生かされている。成果主義によりチーム医療はバラバラになってしまう。意見B全員を評価でAとした場合、給与を出せるのか?出せば給与財源は増えることになるが?意見C説明会でコンサルタントは質問に「自分が上司の評価は出来るのか?」→「受付はするが評価には反映しない」。「2人のチームでやっている場合、チームが悪くても1人が良い成績の場合評価されるのか?」→「一蓮托生」と回答。本当にこれが公正で公平な評価?今後人件費は、総収入(パイ)が減るために成果主義を導入するのではないか?意見DDrは、一体評価になっており360度評価となっていない。他職種の評価を加えるのか?Drの収入は、外来と入院、オペ等種類によっても違うが、公正で公平な評価は出来るのか?意見E医師のインシデントレポートは、「新人事制度」が導入されて増えましたか?以上の意見や質問に対して、経営側は明確に応えることは出来ず、返答についてもこれまでの説明を繰り返すに止まりました。
第5回経営懇談会を4月22日(火)に中央執行委員委員(10名)と経営側5名で、 本部にて経営懇談会を行いました。議題は、1.准看護師の進学に関する特別対策学資金貸付について、2.新人事制度についての2点について話し合いを行いました。 新人事制度の規定・要綱集(案)説明では・・・ 提示された資料は、新人事制度の規定・要綱集(案):62ページ、別冊:21ページと非常に多く説明時間も1時間強の中でしたので、端折ったものでした。そうした中でこれまでの説明の中では示されなかった内容のいくつかを報告致します。 まず、管理職は年俸制とすること、一般職は月給制とするとしています。手当関係については、殆ど現行通りの内容を移行したものとなっています。これまでは、昇級時期が年4回(1月・4月・7月・10月)から、キャリア給・年俸は毎年7月15日に定期更改するとしており年1回に減るという提案になります。 賞与について、事業成果配分と職員の貢献度により配分するという提案で、在籍算定期間と業績算定期間を設けて支給すること。支給に際しては120%・110%・105%・100%・95%・90%・80%の7段階の査定をつけて支給することが提案されています。現在の賞与支給時期は5月14日現在在職者には夏季手当が、11月14日現在在職者には年末手当が支給されますが(一律支給は妥結日在籍)、新人事制度では支給日在籍という提案ですので在籍期間を現行より延ばさなければならなくなります。現行では4月2日〜5月1日、10月2日〜11月1日までの誕生日で定年を迎える職員にもボーナスが支給されますが、新人事制度では支給されないこととなります。例年ですと夏季手当は7月の中旬頃、年末手当は12月中旬頃の支給となりますので特に定年退職の場合はマイナスが大きくなります。また、現行の制度にある欠勤期間のボーナスの支給を中止すること、育児休職期間のボーナスの支給中止などが提案の中に盛り込まれています。 定期昇級は、キャリア給と役割給に分けるとしています。新人事制度では、キャリア給は30年分しかつかなくなり50代になるとこの部分の定期昇級はなくなります。役割給といても査定によりどうなるかわからないことや、役割基準のなかで一般職は3等給に圧縮されます(現状では、職種別の賃金体系で昇級・昇格が細かく分かれている、人事院勧告で11等給まである行政職Tの場合は、管理職を含めても6等級にまで圧縮される提案となっています。これまでの経緯の中で現行の賃金体系がつくられて来たことを考えれば無理に押し込むための歪みが出ることも考えられます)。経営の説明で、現在の定期昇級にあたるとされるキャリア給の昇級幅は2,500円となっており、現行の定期昇級の平均8,114円(3.27%)と比べると定期昇級は70%カットされることになります。現状の職員数を約700名として試算すると、年間の差は6680万円になります。経営側は人件費として役割給やボーナスで配分するとしていますが、査定が入るためにどういう内容になるかは良くわからないというのが実感です。 また、制度上大幅なマイナスとなる准看護師の場合で試算してみると、役割給は1等級(N1)しかありません(現行は3等級まで渡りがあります)ので仮に20歳で勤めて50歳のモデル賃金で現行と比較してみると・・・現行は、430,285円→新人事制度で最高の格付けをして385,500円(N1+ゾーン3上限+成績S)となり差額はマイナス(月)44,785円になります。中位での比較をすると328,500円となり差額はマイナス(月)101,785円にもなります。制度が導入され5年10年とたてばそうした形になることも考えられます。 退職金については、ポイント制にするとしています。勤続ポイントは6年以上勤めないと付かなくなりますし、役割ポイントのウエイトの方が大きくなっていますので少しでも早く出世しなければ退職金も現行制度より悪くなることになります。また、同時に現在部長クラスになれば最高のポイントが約束されていますので安泰という部分と地位を維持していくためには逆らえなくなる事になりかねません。ポイントの削減も含まれています。退職金の内容では、既得権的な部分が含まれています。それは、移行時の退職金を定年扱いで計算して基礎ポイントにすること。制度施行後5年間は経過措置として従前の規定と比較して本人に有利な退職金を選択するとしています。しかし、実際に試算すると平均的な一般職の場合は、現行の退職金規程よりも悪くなることは明らかです。 制度の運用は・・・これまでの経営側も説明してきた、役割等級制度は「等級別役割基準書(案)」と「コース別主要業務基準書(案)」を提示して説明を行いましたが、一般論的な範囲で策定されており実際に運用するには基準が曖昧で混乱を来すのではないかと感じられました。目標管理制度は、職種別の目標例を示し、目標管理シート(案)や人事評価シート(案)も別冊で示して来ましたが、JATA基準というが予防会にあてはまるのか出来るのか疑問を感じました。 役割等級や職場の役割・目標を決めて、個人の目標を設定して管理を行い人事評価をして成績をつけるとしています。成績は7段階でつけるとしていますが定義を見るととても「公正で公平な評価」がなされるとは思えません。定義の表現は非常に曖昧でとても基準を設けられるようなものではありません。「かなりと大幅」の違いや「特に、かなり、やや、普通」の違いについて質問しても基準を明示出来るような答えは返って来ませんでした。 「新人事制度」で最も負担が大きくなるのは、中間管理職です。現状の仕事の上にさらに目標管理や指導業務が加わることとなります。同じ中間管理職でも部下の人数によっても大きく業務量は違って来ます。 こうした中では、理事に対しての「新人事制度」又は「年俸制」を導入しないとしていることにより、非常に厳しくなる「中間管理職」から大きな不満が出されることでしょう。新人事制度の理事長をトップとする成績評価の決定プロセスでも、厚生労働省から短い期間で代わっている今の実態では、これまで同様に施設の所長まかせにして盲判を押さざるを得ない実態は変わらず、「新人事制度」自体がマイナスとなる危険性を心配せずにはいられません。 さらに、成績主義賃金になっても、医療や結核予防会を取り巻く環境は厳しくなることしか考えられません。しかも、結核研究所の補助金削減や水道橋ビルのテナント移転によるマイナスは、誰も攻められないことであり、誰にもどうしようもない事でもあります。診療報酬のマイナスや介護報酬のマイナスも然りです。そのマイナスの補填を、結果的には「新人事制度」を導入して職員のマイナス査定をつけて、給与・ボーナス・退職金を削減する中から捻出することになるのでは・・・という不安と不信、危険性は否めません。 組合は新人事制度の説明の中で、・・・・・削減されるもの【具体例:選択定年制 (20年以上勤続で57歳の職員対象)、欠勤期間のボーナスの支給中止、育児休職期間のボーナスの支給中止・・・・・などなど】については明示して現行の条件との対比が出来るようにすること。モデル賃金表を原稿と新人事制度とで作成して対比できるものを明示すること。准看護婦など明らかに不利益となることが考えられる職員に対しての仔細を個別に明示すること。などについて要求しました。 経営側は、資料の明示については答えるとして、具体的には組合側の要望をまとめ て文章で示してもらいたいとしました。経営側も文章で示すとしています。 また、今後経営側は職員に対しても説明して、意見を求めていくとしました。 「新人事制度」に対する組合からの「質問書」 第5回経営懇談会で要請された質問書について、中央執行委員会で組合員の意見やこれまでの経緯を踏まえて検討して28項目にのぼる「質問書」を経営側に提出しました。 第6回経営懇談会を6月24日に夏季一時金妥結内容調印後、経営懇談会を行いました。懇談会には中央執行委員11名と経営側5名が出席しました。初めに総務部長より、経営側は7月15日導入で進めているとした後、前回の説明会では95%の内容であったが、新たに調整給(上限超過分)の取扱案等を提示して説明しました。主な内容は以下の通りです。 @ 新たな提案内容 対策1 第3ゾーンの範囲を5%から10%に変更する。 対策2 第1ゾーンの範囲を15%から20%に変更する。 経営 経営は上限となる第3ゾーンを5%上乗せして10%とすることにより調整給の対象者の部分をゾーンの中に収めることが出来る。第1ゾーンを5%広げて20%とすることで、役割給の多い部分であり制度の中では優遇ゾーンとなる部分を拡大してより有利になると説明。 対策3 調整給の期間を3年から5年に延ばし、賞与計算基礎に(これまでは含め なかったが)含める。 経営 調整給を5年に延長して、さらに賞与の算定にも入れることで調整給がつい ている者で5年間で退職する者については不利益とならなくなる。しかし、 55歳未満の者は、5年以内に上位等級などに移らなければマイナスとなる。 55歳未満の対象者は20名存在する。 対策4 准看護師については調整給の期間に「准看護師特別対策」を実施する。 経営 新たな制度を別途提案する。 対策5 調整給は5年経過後、3年間で段階的に解消する。 経営 5年に延長した調整給を、激変化措置の緩和策としてさらに3年にわたって段階的に解消することにする。 対策6 上位等級へ昇格する場合につき、特別昇給額を(別途)支給・・資料参照。 経営 等級が上がる時に、特別昇給額をさらに加算する。 以上、新たな提案内容として提示しました。 A 組合の「質問書」に対する回答と説明・・・組合の「質問書」に対する回答は、別途配布資料の内容を読み上げて説明。モデル賃金(A評価を含めた)等の資料も付帯して説明しました・・・別途配布資料。 補足 内容は、これまでの主張を踏襲するもので、欠勤・育児休職中のボーナスカット(昨年の夏のボーナスでの実績は14人、金額で720万円となります。もし仮にカット分を在籍者のボーナスに配分すると、720万円÷630名=平均11,428円加算されると説明)。ボーナス支給を支給日在籍に変える(浮いた分の財源は、ボーナス原資に回す。退職時期の見直しは、費用がかかるので行わない)。等等の主張は一切変えていません。 専務は、「新人事制度」を7月15日導入で進めることを強調。組合は、合意なしの導入は認められないと強く主張。強行導入するのであれば、組合は断固たる措置を取る事。単に結核予防会労組だけの対応ではなく、医労連として対応することになると強く申し入れました。また、説明会には全員参加している訳でなく、仕事の合間に参加しても理解や納得している人は極めて少ない。また、2回目の説明会の参加者は任意としたこともあり、46%の参加者(経営側発表)と少なく経営の説明責任を果たしていない。「新人事制度」は、生涯賃金(ボーナス・退職金まで)に関わる重要な制度で職員の同意を得ずに強行導入することは不当で不誠実と厳しく追及! 第7回経営懇談会を7月8日に行いました。懇談会には中央執行委員11名と経営側5名 が出席しました。初めに総務部長より、「准看護師特別対策について」「調整給の取扱につ いての修正」について説明がなされました。その後、専務より「新人事制度」の導入は7 月15日から9月15日に延期すると回答がありました。尚、「新人事制度」の導入にあた っては、就業規則の改定として進めるとしています。 交渉での主な内容 @ 7月15日の実施予定を、9月15日に延期する。 A 准看護師特別対策について 主な内容:5年間だけは・・・年間100万円を上乗せ。貸付の返済免除期間を2 年に短縮、対象者を55歳に拡大。 B 調整給の取扱についての修正・・・別紙参照 主な内容:課長代理などから課長・看護師長・技師長に昇格する特別昇給額を30,000円⇒35,000円、18,000円⇒21,000円に増額する。それ以上の昇格の特別昇給額は10,000円、6,000円に削減(現在、課長に昇給した際の特別調整手当12%を計算して結果修正)。 交渉の中で専務は・・・「新人事制度」の導入を7月15日から9月15日に延期して導入に向けて準備を進める。やり方は、就業規則の改定で導入する。9月15日をリミットとして考えているので、それまでに現執行部で決めてもらいたい。エンドレスの議論は出来ない。 組合は、経営懇談会は、お互いの立場を話し合う場として設けたもので、何か物事を決 定する場ではない。これまで説明は受けたので今後、大衆団交を要求(団交申入書を提出) する。また、賃金・労働条件を執行部だけで決めることはしない。 専務は、団体交渉では不規則発言が多く、身のある議論が出来ない。生産性がない議論 はしたくない。限られた人数で行い、基本的には労使同数の交渉をしたい。また、交渉に あたっては、論点を絞るためにも要求書を提出してもらいたいと発言。 組合は、団体交渉を拒否する姿勢に対しては、経営側を厳しく糾弾しました。その結果 団交に東京医労連の代表も参加することを合わせて申し入れ、7月22日と29日の団交を経営側が受け入れました。
「新人事制度」問題での団交議題を提出、ストライキ権確立 組合は、「新人事制度」に関わる問題では、「合意なしの一方的な導入を許さないこと」「経営の都合による一方的な不利益変更は許さないこと」を基本に団交を7月22日と29日に設定。団体交渉を行うにあたり、「新人事制度」問題でのストライキ権投票を行い、スト権を確立して闘う準備をしました。 専務は、組合に対して交渉にあたっての要求書を提出するよう求めて来ました。組合は要求はアンケートなど組合員の声を集約してからでないと出せないので、これまでの経過で組合側の「質問書」と、経営側の「回答書」についてと、経営側の説明会に対するアンケート等を支部ごとにまとめているので、そうした内容と組合の「質問書」にある内容をまとめて、団体交渉議題として、7月15日の中央執行委員会で「新人事制度」団体交渉議題をまとめて、今後も団交の中で適時議題を追加するということをことわって7月16日に経営側に提出しました。 同時にストライキ権の投票を実施して、7月15日の中央執行委員会で集約した結果は回収81.1%、賛成74.6%と高い物となり、さっそく、7月16日に東京都知事と東京都労働委員会に労調法37条にもとづく争議通知を東京医労連の名前で手続きを済ませました。 団体交渉は、7月22日と29日、9月2日と9日、10月7日に行われ、東京医労連からは、武藤委員長、菅原副委員長、相沢書記長、小島執行委員にも参加を頂き進めて来ましたが、専務は1月の説明以後強行姿勢を取り続けています。労使交渉は、基本線で平行線のまま決裂となっています。 (4)今後の闘いの進め方についての方針(案) これまでの経緯は以上の通りです。この中でわかることは、専務は提案した「新人事制度」について時間がかかっても職員の理解を得て導入しようとする考えは全くなく、全てにおいて自分の言う事だけをただ繰り返すという不誠実な対応を団体交渉でもとり続けています。 また、導入に際しても経営の都合だけで、団体交渉も行わずに7月15日に導入しようと画策してきました。組合が団交を申し入れた後も、まともな話し合いをして合意点を見つけるという姿勢からはほど遠く、導入期限の延長についても9月15日、10月15日に便宜上伸ばすという全く不誠実な態度を取っています。 初めから経営の論理も変えるつもりもなく、「新人事制度」の内容も変更しないと言うことを決めておいて、議論が足りないことを補うためだけに団交を行っているとしか考えられない態度をとり続けています。 経営は、40億円の基金の見直しをして特別会計と合わせて62億円もの資金を捻出して、借金の一括返済を行い無借金経営となり超健全経営を行っていること。経営が苦しいという将来展望をするなかでも、着実に新山手病院に循環器センターをつくり、さらにどこもの手を付けていない全く新しい介護や医療サービスも含めた老人マンション「(仮称)ガーデンヒル新山手」の建築を進めており合わせると十数億円にのぼる投資額となります。 私達組合は、こうした超健全経営の結核予防会が何故10月15日に「新人事制度」を入れなければならないのか明確な説明を求めてきました。さらに、総人件費は「新人事制度」でも「現行の制度」でも全く変わらないと専務自身が認めており、このことから経営状況がどんなに悪くなっても人件費により結核予防会の経営が圧迫されることはなくこのことについても明確な説明を求めてきました。こうした質問に対しての明確な説明はなく、これまでの将来不安や組織の活性化が出来なくなり結核予防会は腐ると専務は繰り返しています。 現在の私達の賃金は、平成12年3月24日に協定した賃金表をもとに支払われており、この協定は法律的にも組合員に適用されるものとなっています。専務は強行導入することを示唆していますが、現行での強行導入は不誠実団交と協定無視の不当労働行為であり、違法行為であります。組合は、不当労働行為を断固許さず闘うことを方針とします。 今後は、役員と組合員が一緒になって団結して闘うことと、東京医労連と顧問弁護士と相談の上さらに共闘を強めて闘いを進めていきます。具体的な、闘いとしては以下のことをすすめていきます。 記 1、組合員に対して「新人事制度」導入に対する一票投票を行う。 2、一票投票の結果に基づき経営に要求する。 3、強行導入に対しては、東京医労連と顧問弁護士と相談の上、ストライキ、要請行動、宣伝行動を行う。今後は、労働委員会も視野に入れ必要な場合は法的措置も取る。 4、10月7日(火)、19時より、水道橋ビル3階会議室にて、「新人事制度」に関する第5回(実質第4回)団体交渉を行います。同日15時30分より行う組合の会議は、拡大中央執行委員会としますので支部役員4役の方は積極的にご参加下さいますようお願いします。 2003年10月10日 東京医労連「成果主義賃金」学習会資料 |
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