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国立・公的病院部会

自治体立病院に関する緊急要求と取組み

 

 

2004年4月

日本医労連中央執行委員会

日本医労連自治体病院部会

 

はじめに

 総務省まとめの自治体立病院の2002年度決算概要によると64.4%の病院で経常赤字

を計上しており、これは前年度と比べ14.6ポイントの増加であり、自治体病院経営が

一層の困難に直面していることを物語っている。

 小泉医療改革や三位一体の地方自治体改革により、困難さを増す自治体病院経営などを背景に、いま自治体病院に様々な「合理化」攻撃がかけられている。

 自治体病院部会では、当面する「合理化」攻撃の焦点に絞り、見解と緊急要求をまとめ、自治体立病院の充実・発展と地域医療の拡充をめざす運動の推進を呼びかけるものである。

 

T.自治体病院をめぐる情勢の特徴

 

1、自治体病院の経営「合理化」のうごき

 

全国自治体病院開設者協議会と全国自治体病院協議会(以後「全自病協」)は、自治体立病院における経営改善を促すため、2001年8月共催で経営改善委員会を設置し2003年5月に経営改善報告書をとりまとめている。いま、全国で行われている経営「合理化」の焦点になっているのは、(1)経営形態の変更と(2)広域再編の2点である。

 

(1)経営形態の変更

1)変更をめざす経営形態としては@地方公営企業法の全部適用(以後「全適」)、A地方独立行政法人化(以後「独法」。地方独立行政法人法は2003年7月16日公布、2004年4月1日施行)、B指定管理者制度(地方自治法の一部改正が2003年9月2日施行。法第244条の2の第3項で管理委託制度から指定管理者制度へと移行)、C民間移譲・売却が考えられている(表1参照)。

「全適」は1年間で約20件増え、1025の自治体病院中136病院となっている。地方独法は法施行が今年4月からであるが、大阪府立病院などで検討作業がすすんでいる。管理委託(公設民営方式)は、2001年度企業年鑑から推計すると28病院(県立3病院、市町村立25病院)となっている。法改正により現在管理委託の形態をとっている病院は、3年以内に指定管理者制度に移行するか、直営に戻すかの選択を迫られる。今後指定管理者制度を乱用した管理委託が増えていくことが危惧される(横浜市の新港湾病院、秋田県の米内沢病院)。民間移譲・売却では東京、神奈川、福岡、長崎などの都道府県立病院で統合再編計画の中で実施されようとしている。宮城県の黒川病院でも民間移譲が表面化している。

全自病協は、当面、「全適」推進の方針であり、地方独法については「全適」と大差がないとして消極的である20039月に開催された「第2回全国病院事業管理者・事務責任者会議」における基調発言)

地方独法の成立を受けて2003年7月17日に出された総務省、文科省の共同通知によると、対象事務・業務の廃止・民間譲渡をまず検討し、その後に指定管理者制度なり「独法」なりを選択すべきと、まず「民間でできることは民間で」という姿勢を明確にしている。

開設者側は、三位一体改革による交付税の削減・歳入不足、市町村合併を背景に、自

治体立病院の廃止、・民間譲渡・売却、管理委託、地方独法化などへの傾斜を強めてくると見るべきである。全自病協は「全適」をテコに賃金を含む「合理化」、病院再編で自治体病院の「生き残り」を図ろうという姿勢であるが、開設者、総務省筋は必ずしもそうではない点留意すべきである。

 

(2)広域再編

広域再編は、2つに大別できる。

1)1つは統廃合、民間移譲・売却を含む「単純縮小型」広域再編である。県立病院における再編成と市町村合併を背景とする市町村立病院の再編成とを挙げることができる。

県立病院では経営形態の変更の項で挙げたほか千葉県などで具体化されている。市町村合併に伴う病院再編の動きは和歌山県(古座町、古座川町、串本町の合併に伴う2病院の統合・新築問題。他に一部事務組合立4病院の再編問題など)で典型的な動きが見られる。一方では、合併優先で病院再編はその後という傾向も見られるが、これは問題の先送りに過ぎず、合併に当たって行政サービスのあり方を住民に問わないという点で大きな問題である。

2)2つ目は、いくつかの自治体立病院・診療所を基幹病院とサテライト病院・診療所に再編成するサテライト方式による広域再編である。医療資源の乏しい地域においては民間への丸投げが難しいことから、サテライト方式への政策選択の傾斜が強まる。

山形県の置賜広域(2市2町3病院1診療所812床を総合病院・救命救急センター520床、サテライト医療施設2病院1診療所160床に再編成)、青森県(6医療圏ごとに基幹病院を整備し、200床未満をサテライト病院に、120床未満を診療所に再編成する方針。うち西北五圏域では、5病院1,038床を基幹病院604床、サテライト2病院230床、2無床診に再編成する計画)、岩手県(県立27病院、5付属診療所6,161床をセンター病院1、広域基幹病院8、地域基幹病院2、サテライト施設14、精神病院1に再編成。病床数は順次削減しH20年度に5,417床へ)、宮城県(登米郡8町と隣接の1町で合併の予定。域内の公立5病院のサテライト方式による広域再編を検討)などで実施、検討されている。新潟県でも市町村合併も背景にしながら、県立病院、市町村立病院、厚生連含めた検討が始まっている。

3)これらの動きの背景には公的医療機関全体の再編成の思惑がある。200211月、自民党の「公的病院等のあり方に関する小委員会」が報告書を出し、それを受け12月に厚労、総務、文科、農水の4省からなる「公的病院等に関する関係省庁連絡会議」が設置された。

そこでの議論を踏まえ、2003年4月に「地域における公的病院等を含めた医療機関の機能分担と連携の確保への協力依頼について」が都道府県の関係部局に通知され、地域における協議の場の設置と医療計画における記載を要請している。これは地域における医療機関の機能分担と連携の推進を一般的に要請したものではなく、採算性最優先の民活路線に基づく公的医療機関の縮小再編を目指すものであることは明らかである。都道府県段階における通知の具体化はこれからであるが、各自治体がそれを先取りしている形である。情勢しだいでは通知に基づく大規模な再編が県主導で始まる危険性をはらんでいる。

 

2、医師不足の深刻化と医師の臨床研修の義務化をめぐるうごき

 

(1)医師の名義貸しの背景にある深刻な医師不足

文科省は今年1月、医学部を持つ全国51の大学で延べ約1600人の医師が名義貸しを行なわれていたとの調査結果を発表した。病院側についていえば、標欠による診療報酬の減額を免れるための詐欺行為であり、許されるべきものでないことはいうまでもない。しかし、その背景には、地方の一般病院での医者不足と大学側の若い医師の低収入・無給という問題があることを忘れてはならない。

厚生労働省の2000年度の立ち入り検査によると、医師配置の医療法基準を充たしている病院は、71.3% に過ぎない。地域別に見ると北海道・東北地方が深刻であり、全体としては「西高東低」の状況となっている(表2、表3)。 

注)2002年度検査結果が出ているが、自治体病院との比較上2000年度分を例示している。大きな差異はない。

自治体立病院については更に深刻である。自治体病院協議会の1999年11月の調査結果によると、医師配置の医療法基準を充たしている病院は、51.7% に過ぎない。

医師が不足している病院の医師の充足率は79.8%で、ここでも北海道、東北地方は特に深刻である(表4)。また、離島・辺地・振興山村・過疎地域に該当する病院で77.6%、100床未満の病院で68.7%、町村立の病院で71.5%と充足率が低くなっているのが特徴である。

 

表2 医師の充足率病院数

充足率

60/100未満

60/100以上80/100未満

80/100以上100/100未満

100/100以上

合計

件数

145

897

1,418

6,123

8,583

1,042

7,541

8,583

比率

1.7%

10.5%

16.5%

71.3%

100%

12.1%

87.9%

100%

 

表3 医師の地域別遵守率

全国

北海道・東北

関東

北陸・甲信越

東海

近畿

中国

四国

九州

71.3

47.6

78.2

62.1

75.4

86.1

71.9

70.3

72.9

 

表4 医師が不足している病院の状況(地域別)

 

総 数

北海道

東 北

関 東

北 陸・
信 越

東 海・
近 畿

中 国・
四 国

九 州

病院 数

343

69

107

15

43

31

40

38

医師充足率

79.8%

67.6%

78.1%

90.4%

83.5%

88.2%

83.0%

86.2%

常勤医1人当り年間給与額

16,969

20,163

17,532

15,821

15,691

16,172

15,184

15,828

*給与額の単位は、千円

 

(2)新医師研修制度に絡む医師の引き上げと新制度による新たな可能性

 今年4月からの新医師研修制度の実施、国立大学の独立行政法人化にともない、人的余裕のなくなった大学側は自治体立病院からの医師の引き上げなどの措置をとっている。これが、地方の中小の自治体立病院の医師不足に拍車をかけている。

 だが、一方で研修指定病院と研修医とのマッチングの地域別状況(表5)を基に、大都市部偏在、西高東低の医師配置が多少なりとも是正されるとの見方も出ている(自治医科大学、防衛医大の卒業生は除く。アンマッチングの353人はこれから個別に研修病院を探すことになる)。また、多くの自治体立病院が研修指定病院となっており、自治体立病院が「医局との一対一人事」から離れ、独自に医師の育成、確保を図っていく条件が生まれたことも事実である。

 しかし、従来の「医局人事」という調整機能が低下し、研修指定病院になれない中小自治体病院においては、更に医師不足が深刻化するという2極分化が懸念される。

 

表5 新医師研修制度の地域別マッチング状況

都道府県

募集定員

マッチ者数@

空席数

平成15年度採用実績A

増 減
@−A

北海道計

518

315

203

288

27

東北計

750

433

317

378

55

関東信越計

3,630

2,786

844

3,067

-281

東海北陸計

1,515

948

567

892

56

近畿計

1,984

1,445

539

1,710

-265

中国計

709

479

230

501

-22

四国計

372

246

126

230

16

九州計

1,392

1,104

288

1,100

4

全国計

10,870

7,756

3,114

8,166

-410

 

U.わたしたちの見解

 

1.経営困難の根本原因は政府の低医療費政策と不充分な財政措置

 

自治体立病院の経営困難の背景には、政府の低医療費政策があることは明らかである。

 同時に、不採算医療を担っている(へき地医療拠点病院の69.0%、救命救急センターの41.2%、臨床研修指定病院の33.3%、エイズ治療拠点病院38.5%、地域ガン診療拠点病院52.2%など)ことに対する財政措置が不十分である点を指摘せざるを得ない。

 表6は他会計からの繰入状況であるが、繰入額が減少していることが分かる。総務省による2003年度の自治体病院への繰出し基準では、建設改良債の元利償還金への繰出し率が、3分の2から2分の1に削減された。

 それと表裏をなす形で自治体への交付税基準が改悪され、交付税総額が削減されている(表7〜9)。

繰出し基準の改善とそれに見合う各自治体への交付税措置の充実が必要である。また、各自治体にあっては、総務省の繰出し基準を最低基準とした「繰出しルール」の確立が求められる。

 以上の点以外に経営問題の重要な要因として、病院管理者の資質、能力の問題が存在することは確かである。しかし、その解決策を次に見る経営形態の変更に求めることは、自治体立病院としての自殺行為である。自治体、自治体立病院双方における理念の確立、

それを実現するための人材の配置、育成、組織の構築こそが必要である。

 

 

表6 赤字病院比率と繰入状況  

 

1997年度

1998年度

1999年度

2000年度

2001年度

2002年度

経常赤字病院比率

54.4

61.1

57.3

50.5

49.8

64.4

収益的収入繰入額

566,288

569,700

575,802

568,058

562,658

559,812

資本的収入繰入額

197,175

176,188

169,465

161,013

161,482

170,961

繰入合計額

763,463

745,888

745,267

729,071

724,140

730,773

対前年増減比

-2.3

-0.1

-2.2

-0.7

0.9

地方公営企業年鑑 繰入額の単位:百万円

 

表7 普通交付税措置単価の推移                          単位:千円

 

 

97年度

98年度

99年度

00年度

01年度

02年度

03年度

病院  (市町村)

交付税・1床当たり

742

710

706

657

592

544

506

前年対比(%)

 

-4.3

-0.6

-6.9

-9.9

-8.1

-7.0

元利償還金に対する交付基準

3年度〜13年度許可債の元利償還金×0.4

3年度〜13年度分×0.4。14年度分〜×0.3

市町村立診療所(1診療所当り)

6,200

7,100

7,100

7,100

7,100

7,100

7,100

看護婦養成所(生徒1人当り)

645

645

668

695

721

737

749

 

表8 特別交付税措置単価の推移(市町村等分)                  単位:千円

 

区分

97年度

98年度

99年度

00年度

01年度

02年度

03年度

病床割

不採算地区病院

599

599

619

663

663

663

663

精神病床

293

300

450

493

493

493

493

結核病床

293

300

450

493

493

493

493

リハビリ病院

293

300

450

493

493

493

493

周産期医療病床

1,506

1,551

1,885

2,066

2,289

2,289

2,289

小児医療病床

 −

 −

 −

 −

 −

 −

899

救急病院

Aランク

63,100

66,900

68,000

71,800

71,100

71,100

42,700

Bランク

36,400

38,600

39,200

41,400

40,900

40,900

24,500

B’ランク

30,000

31,800

32,300

34,100

33,600

33,600

20,200

Cランク

24,800

26,300

26,800

28,300

27,800

27,800

16,700

小児医療提供病院

 −

 −

 −

 −

 −

 −

5,200

救命救急センター 30床以上/所

44,700

47,400

48,200

50,900

50,300

50,300

50,300

救命救急センター 30床未満/床

1,612

1,709

1,736

1,831

1,809

1,809

1,809

追加費用(対象職員当り)

127

131

132

130

127

122

113

 

 

表9 病院事業に関する交付税総額の推移                     単位:億円

 

9年度

10年度

11年度

12年度

13年度

14年度

15年度

普通交付税

2,748

2,762

2,811

2,723

2,658

2,636

2,596

特別交付税

606

659

722

775

777

776

702

小計

3,354

3,421

3,533

3,498

3,435

3,412

3,298

対前年増減比

 −

2.0

3.3

-1.0

-1.8

-0.7

-3.3

 

 

.経営形態変更のねらいは民間的「合理化」と自治体業務のスリム化

 

経営形態変更のねらいは、自治体側においては自治体立病院の「合理化」による自治体業務のスリム化と財政負担の軽減であり、最終的には自治体立病院の切り離しである。

 自治体病院側にとっては、民間的「合理化」手法の導入と徹底による「生き残り」が目的である。

 「合理化」の内容としては、従来から行われてきた業務委託(より全面的な形態としてのPFI)や臨時・パートなど不安定雇用の拡大、看護「合理化」の推進とともに賃金体系の変更も含まれている。2003年10月に開催された「自治体病院改革サミット・シンポジウム2003」では、「全適」の目的について、管理者の権限強化と同時に、「職員給与の見直し」が重要との姿勢を明確にしている。

 これらの「合理化」をよりドラスティックに進めるための「ツール」として経営形態

の変更が検討されている。以下公的責任が希薄な順に検討する。

 自治体立病院の廃止・民間移譲は、経営形態の変更ではなく経営主体の変更である。民間法人への関与権は皆無であり、住民の健康、地域医療に対する自治体の責任の放棄そのものでるか、それにつながるものである。

指定管理者制度では従来の管理委託と比べ自治体(主に首長)の関与が多少盛り込まれてはいるが、それと引き換えに委託先が公共的団体等に制限されていたものが事実上無制限となり、公共性を担保することは従来同様極めて困難である。これはあくまで管理委託との比較であり、地方公営企業法適用の従来形態からの移行の場合、議会、住民関与が希薄となり、公共性の低下は免れない(公共性をめぐる議論には、首長の権限強化に伴う業者との癒着の危険性の増大も含まれる)。そこに税金を投入する正当性が問われると同時に、建物の更新は自治体が行いその上管理料を払うことから、財政負担の軽減という点でも逆効果という矛盾を抱える。正に自治体業務と財政の民間への「丸投げ」である。

 「全適」、地方独法ともに病院管理者の権限強化による民間的「合理化」の推進がねらいであり、自治体立病院本来の使命、理念の否定、崩壊につながりかねない。また、自治体側の財政措置を含む責任を暖昧にしてしまう危険性をはらんでいる。注1)

地方独法は、自治体が出資して設立する別法人である。指定管理者制度と比較し自治体側の関与が強いように思われるが、その主体は首長と評価委員会である。議会の関与は極めて希薄である。

特に、「非公務員型」の場合は、公務員の身分を一方的に奪うものであり、賃金体系を含む民間手法の導入は容易であり事実上指定管理者制度と変わらない運用となる危険性を持つ(地方独法導入の選択権は自治体側にあるが、「公務員型」、「非公務員型」の決定権は認可権者である県及び総務省が握っている点留意する必要がある)。

 「全適」については、医労連傘下のいくつかの単組支部の病院でも既に導入されている。法的には、管理者が独立した権限を持つことにより、「一部適用」に比べ、民間的「合理化」手法の導入、本庁との切り離しが容易であるといえる。しかし、最大の問題点は、開設者・病院当局の姿勢、民間的「合理化」手法導入の意図にある。

 経営形態の変更のねらいが、「合理化」による「生き残り」である限り、全自病協の意図に反して、自治体立病院の理念、役割の否定を通してその存立の基盤自体を切り崩すことにつながることを指摘せざるを得ない。

 

注1)独立行政法人国立病院機構の中期計画における予算を国立病院特別会計当時の決算(H12年度)と比較をすると、財政面での変化の特徴が出ている(下表参照)。

 財政規模は、センター病院6ヶ所、ハンセン病13ヶ所を除くため、縮小している。

 収入面での最大の特徴は、名称は異なるが「繰入金」の激減である。特別会計のH12年度決算では収入総額の11.7%あったものが、独法予算では7.5%となっている。独法化による財政面での責任の曖昧化は、必至である。借入金は7.8%から3.8%に減っている。

支出面では施設整備費の減が特徴である。収入総額の8.6%から4.8%への激減である。説明書では、過去5年間の総投資額の5割にしたとしている。

 また、人件費については人件費比率と委託比率の合計数値で管理するとしている。技能職については中期目標期間中に714人純減するとしている。

 表からは窺がえないが、借入金の返済、減価償却費の増大などの要因も加わり、一層の「合理化」圧力が加わることは明白である。

 また、独法になり中央・地方の管理機構の財政面に与える負担増にも注意する必要がある。

 国立病院の動きを概括しただけでも、自治体立病院の地方独法への移行に際しては名称が変わるだけで繰入金の額には大きな変化はないだろうといった考えが甘い見通しであることは明らかである。

 

 

 

独法国立病院機構・中期計画の予算  単位:百万円

 

H16〜20

単年度

比率

 

収入

 

 運営費交付金

260,373

52,075

6.6

 

 施設整備補助金

20,000

4,000

0.5

 

 その他補助金

13,313

2,663

0.3

 

  (小計)

293,686

58,737

7.5

 

 長期借入金等

150,000

30,000

3.8

 

 業務収入

3,392,903

678,581

86.3

 

 その他収入

96,687

19,337

2.5

 

  合   計

3,933,277

786,655

100.0

 

支出

 

 業務経費

3,286,341

657,268

83.6

 

 施設整備費

190,000

38,000

4.8

 

 借入金償還

249,406

49,881

6.3

 

 支払利息

101,107

20,221

2.6

 

 その他支出

35,899

7,180

0.9

 

  合   計

3,862,753

772,551

98.2

 

 

国立病院・療養所特別会計決算 単位:百万円

 

H12

比率

 

収入

 

一般会計からの繰入

140,376

11.7

 

事業収入

777,789

64.6

 

借入金

94,200

7.8

 

その他

9,675

0.8

 

前期剰余金・積立金

41,183

3.4

 

  合    計

1,203,599

100.0

 

支出

 

人件費

480,514

39.9

 

旅費

2,481

0.2

 

物件費

376,408

31.3

 

施設費

103,939

8.6

 

補助費

4,232

0.4

 

一般会計へ繰入

334

0.0

 

他会計へ繰入

90,443

7.5

 

予備費

200

0.0

 

その他

4,672

0.4

 

  合     計

1,063,224

88.3

 

 

 

 

. 住民の医療要求ではなく、財政問題主導ですすむ広域再編

 

統廃合、民間移譲・売却を含む広域再編の主要な背景には、自治体の財政事情や市町村合併の事情がある。自治体立病院の累積欠損金の縮小、繰り出し金の削減がねらいである。

 二次医療圏、広域的な医療の完結、高度化等も目的に掲げられるが、積極的なネットワークの構築の努力は希薄であり、民間病院の存在を前提とする公的医療の縮小に過ぎないといえる。これは、民間資源が豊富に存在する大都市部、あるいは交通手段の発達を背景に代替施設の存在を主張しやすい県立病院の再編に典型的に見られる。

市町村合併では、新自治体に複数の自治体立病院が存在するようになること、あるいは一部事務組合の構成と異なる自治体の組合せになることが原因で再編論議が持ち上がる場合が多くみられるが、地域医療の確保、充実という本来的議論が必要である。

 サテライト方式による広域再編は、比較的医療資源の乏しい地域で民間への丸投げが困難性を持つなど多少事情は異なるが、自治体の財政難、市町村合併などの背景は同様であり、医療切捨ての性格は同様に指摘できる。「効率」化の思想は貫かれており、広域再編の先には経営形態の見直し、「民間手法」の導入があることをしっかりと見ておく必要がある。事実、岩手の県立病院の再編成では、業務委託の拡大が同時に提案されている。

 しかし、一方で深刻な医師不足がその背景にあることも事実である。この種の再編が東北地方に集中していることが、そのことを象徴している。しかし、そうであるならば、抜本的な医師確保対策こそが必要ではないか。新医師研修制度をも活用して、より広域的な医師確保対策が求められる。医師不足を公的医療機関縮小再編の理由にさせてはならない。

 また、広域再編の手法自体の問題も見逃してはならない。検討委員会やパブリックコメント方式を取り入れ「民主的」装いをこらしている場合もあるが、結局は財政問題優先の上からの再編計画の押し付けであり、「医療切捨て」との住民からの反発が強まっている。

 住民要求、住民参加による自治体病院の理念の再構築とそれを土台にした魅力ある病

院作りと地域の医療連携、自治体の責任を明確にした保健・医療・福祉の地域ネットワークの確立こそが必要である。

 

 

V.私たちの要求

 

1.対政府総務省・文科省・厚労省に対する要求

@医療保険制度の再編成、新たな高齢者医療の創設、診療報酬体系の見直しを柱にした「医療改革の基本方針」を抜本的に見直し、誰もが安心して医療を受けられるよう国の公的責任を明確にした医療制度改革を行うこと。

A株式会社の病院経営への参入、混合診療の拡大、医師・看護師等の派遣解禁など、規制緩和の名による医療の市場化・営利化を中止すること。

B医師不足を解消するための養成目標・要請計画を明確にし、施策を講じること。また、医師の地域偏在を是正するための措置を講じること。

C看護師の増員など医療事故防止のための所要の措置を講じること。

D自治体病院が住民の命と健康の砦として、地域医療の規範を示す役割を十分に果たせるよう、自治体立病院への繰出し基準の引き上げとそれを裏付ける交付税措置の拡充を行うこと。

E財政問題や市町村合併、医師不足を契機にすすめられている自治体立病院の再編・統廃合計画は、地域医療確保の視点から抜本的な見直しをはかることとし、計画の凍結を指導すること。

F自治体病院の廃止・民間移譲、地方独法化、指定管理者制度、地方公営企業法の全部適用などの強制・誘導をしないこと。

 

 

2.都道府県に対する要求

@国・政府に対して、自治体立病院が住民の命と健康を守る地域医療の中核的役割を担い続けていくために必要な施策と財政措置を行うよう要請すること。

A県立病院の民間移譲・売却、指定管理者制度の導入、地方独立行政法人化は行わないこと。

経営効率最優先の「合理化」を目的とする地方公営企業法の全部適用は行わないこと。

B 市町村合併の押し付けやそれに伴う市町村立病院の統廃合を誘導しないこと。

C広域的な保健・医療・福祉のネットワークづくりを住民要求に基づき住民参加ですすめること。その中で都道府県立病院の果たすべき理念・役割を明確にし整備を図ること。

また、市町村立病院の整備を援助すること。

D市町村における保健・医療・福祉の包括医療の推進を支援すること。

E医師確保のために県独自の施策を講じること。 

その一環として県独自の奨学金制度の確立、研修指定病院化の援助などを行うこと。

 

3.自治体(開設者)に対する要求

@国・政府、県に対して、自治体立病院が住民の命と健康を守る地域医療の中核的役割を担い続けていくために必要な施策と財政措置を行うよう要請すること。

A自治体行政における自治体立病院の位置付け、役割を明確にすること。

それを基に自治体立病院に対する繰り出しルールを明確にすること。

B財政効率、市町村合併優先の自治体立病院の統廃合・再編成は行わないこと。

C保健・医療・福祉の包括医療の推進を図るとともに、その中での自治体立病院の果たすべき理念、役割を明確にして整備を図ること。

D周辺の自治体と連携・協力し、広域的な保健・医療・福祉のネットワークづくりを住民要求に基づき住民参加ですすめること。

E自治体立病院の民間移譲・売却、指定管理者制度の導入、地方独立行政法人化は行わないこと。

経営効率最優先の「合理化」を目的とする地方公営企業法の全部適用は行わないこと。

 

4.病院長、管理者に対する要求

@国・政府、県、開設者に対して、自治体立病院が住民のいのちと健康を守る地域医療の中核的役割を担い続けていくために必要な施策と財政措置を行うよう要請すること。

A保健・医療・福祉の包括医療の推進を図るとともに、その中での病院の役割・機能を明確にすること。

B財政効率、市町村合併優先の自治体病院の統廃合・再編成は行わないこと。

C他の医療機関・施設と協力し、広域的な保健・医療・福祉のネットワークづくりを住民要求に基づき住民参加ですすめるとともに、ネットワークづくりのコーディネーターの役割を果たすこと。

その一環としてベッドのオープン化、医療機器の共同利用、地域の開業医への生涯研修の場の提供などを行うこと。

D研修指定病院として魅力的な研修プログラムを実施し、有能な医師の育成・確保を図ること。

E民間移譲・売却、指定管理者制度の導入、地方独立行政法人化は行わないこと。

経営効率最優先の「合理化」を目的とする地方公営企業法の全部適用は行わないこと。

F病院運営への住民の意見の反映、運営への住民参加をすすめること。

G労働組合との協議・合意による病院運営を行うこと。

 

 

W.当面する取組み

 

 既に見たとおり、自治体立病院にかけられている攻撃は独自の背景を持つと同時に、4省庁連絡会による公的医療機関の再編成に見られるように、小泉構造改革の規制緩和路線に基づくものである。

 県医労連に結集し運動の調整を行い、自治体立病院問に視野を限定せず、地域の医療提供体制を守り、充実させる取組みとして位置づけた運動展開が重要である。

 また、「緊急要求」については、自治労連との調整を行ったもので両組織共通である。両組織の委員長によるアッピールも出されており、各県段階での共同行動を県医労連を通じて前進さる。

 これらの点をふまえ、以下当面する行動を提起する。

 

1.組合員学習の実施

   この『緊急要求と取組み』等を使い、自治体立病院をめぐる情勢、自病院の状況・課題、自治体や地域の課題について学び、討議し、認識を深める。

 

2.緊急要求に基づく病院当局、自治体への申入れ

この『緊急要求と取組み』には、自治体病院をめぐる情勢の特徴、日本医労連自治体病院部会としての見解、基本要求をまとめたものである。

   『要求書(要請書)』、『懇談申入れ書』のひな形を活用し、病院当局、自治体への申入れや懇談を実施する。

   当該労組としての独自の要求がまとまっていれば、同時に提出する。まとまっていない場合にも、この緊急要求での申入れ、懇談は先に実施する。

 

3.地域住民との懇談・アンケート

   地域住民、患者さんの医療要求や自病院への要望、苦情等をつかみ、それを医療改善や病院の運営、病院の将来方向についての政策作りに生かすため、地域住民との懇談やアンケートを実施する。

   懇談先としては、自治会、老人クラブ、地域の民間病院・開業医、医師会などが考えられるが、自病院の医師等のスタッフの協力も得て、腰痛体操教室、糖尿病教室など住民の関心に応えながら、その中で懇談をするなどの工夫を行う。

   アンケートについては別紙ひな形を活用し、自病院独自の項目を付け加えるなどの工夫をする。

 

4.経営分析、政策作り

   さまざまな『合理化攻撃』に対処し、困難さを増す医療情勢の中で自治体立病院としての発展をかちとって行くためには、組合として自病院の経営の現状と問題点、課題をきちっと把握し、地域の医療状況、住民の医療要求などもふまえた病院の将来方向についての政策を持つことがどうしても必要である。

部会の『経営分析のてびき』、『政策作りのてびき』(現在運営委員会で論議中)を活用し、それらをすすめる。そのために自治体病院部会としての援助を行う。

 

5.政策に基づく病院当局、自治体への申入れ

   「病院政策」での病院当局、自治体への申入れ、懇談を行う。

政策は、必ずしもまとまったものである必要はなく、部会の『緊急要求』を自病院に当てはめ、組合としての基本的な考え方をまとめた程度でも十分である。形式にこだわらず、病院の将来方向について協議する関係を当局、自治体との間で築くことを目的とする。

 

6.医療を守る会組織の結成と住民ぐるみの運動の展開

   当局からの提案の状況、「合理化」攻撃の内容をふまえ、「○○地域の医療を守る会」などの組織を立ち上げ、住民・患者ぐるみの運動を組織する。

   この組織でアンケートの実施や政策作り、自治体当局との交渉を行うことも検討する。

段階論にならず、状況に応じて柔軟に効果的な運動を組織することが重要である。

   ビラ、ポスターなどの地域宣伝、地域学習会・シンポジウムの開催、議会請願など幅広い運動をすすめる。

(以    上)

 



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