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看護闘争

いま看護現場はどうなっているのか

‐各種調査結果等からみた特徴点‐

 

2004年4月・日本医労連看護闘争委員会

 

 「看護師メッセージ」は、看護師が仕事に追いまくられ、心身ともに疲弊するとともに、患者の安全と看護内容にも深刻な影響を与えていることを、あらためて浮き彫りにしました。

 本稿では、日本医労連がこの間おこなってきた調査結果等も活用して数値も示しながら、「看護師メッセージ」の裏づけ的に、現在の看護現場の実態、特徴点を示すものです。

 

看護師は疲れきっている

 まず第1に言えることは、看護師が疲れきり、健康も破壊されているということです。

 「看護現場実態調査結果」(2001年5月、看護職員28,741人分)によれば、平均年齢35.1歳、20歳代4割という若い集団でありながら、「疲労の回復について」では、「疲れが翌日に残ることが多い」が54.7%と過半数を占め、慢性疲労が実に8割にも達しています。「今の健康状態をどう思いますか」では、健康不安が7割にもなっているのです。具体的な自覚症状でも、「朝起きた時でも疲れを感じる」81.9%、「仕事中にも疲れを感じる」78.0%など、疲労感が如実に現れています。

 他職種との比較でも、看護師の疲労感が如実に示されています。「2004年春闘アンケート・個人データによるクロス集計比較」によると、「とても疲れる」は看護職で56.5%になっています。しかし、他職種では、介護職39.2%、医療技術職30.1%、事務職29.1%、技能労務職27.8%です。看護職が、いかに過酷な労働実態に置かれているかを示しています。

 

過密労働は安全と看護内容にも大きな影響

 過密労働は、看護内容にも大きな否定的影響を与えています。

 「看護現場実態調査結果」では、「十分な看護が提供できているか」では、「できている」は8.2%に止まり、「できていない」が56.7%にも達しています。「できていない理由」(図表42、複数回答)では、「人員が少なすぎる」72.4%、「業務が過密になっている」71.1%の2つが抜きん出ています。「看護師アンケート」でも具体的に示されたように、業務量が多すぎて、処置等をこなすのに精一杯で、一人一人の患者に十分対応できていないのです。

 そのため、医療事故がいつ起きてもおかしくない、誰もが事故を起こしかねない状況になっているのです。「看護現場実態調査結果」によると、「ミスやニアミスの経験」(図表46)では、「ある」が93.8%を占め、「続発している原因は何だと思うか」では、85.0%が「医療の現場の忙しさ」をあげています。

 この間、医療事故が大きな社会問題となり、様々な対策が採られるようになってきました。しかし、その到達点は不十分と言わざるを得ません。

 「看護職場の医療事故防止の実態調査結果」(2003年9月)では、安全管理委員会については、「機能し、出される対策が職場に生かされている」が50.9%と、かろうじて5割を超えましたが、他の項目は、「リスクマネージャーから対策が出され、役立っている」38.5%、「ヒヤリハットやインシデント事例について対策が出され、有効に活用されている」43.7%など、いずれも半数にも届いていません。また、「耐用年数を超えた医療機器がある」が8割にも達するなど、具体的な個別対策も不十分な実態です。

 

人員対策抜きの事故対策

 なぜ事故防止策が不十分な到達なのか、「医療事故防止の実態調査結果」は、人員対策抜きだからだということを示しています。

 「安全を考慮して人員や夜勤人員が増やされたか」では、「増員された」3.5%、「夜勤人員が増やされた」5.5%に対し、「全く変化ない」55.8%、「欠員も改善されていない」30.5%となっています。そして、「重度の疲労や精神的負担になる無理な勤務になっている」40.1%、「かなりなっている」46.9%という結果です。

 医療の高度化に加え、入院日数の短縮で患者の重症化がすすみ、看護現場がかつてなく忙しくなっていることは、多くの関係者が指摘しているところです。医療事故防止対策が職場をいっそう忙しくしている側面もあります。ダブルチェックを徹底するにしろ、マニュアルを守るにしろ、そのための時間と人手をどう確保するかが問われているのです。

 しかし、日本医労連が毎年おこなっている「夜勤実態調査」の結果でも、病棟の百床あたり配置人員数は、それまでの増員傾向から、1997年以降は横ばい傾向となっています。そのため、ついにここにきて、平均夜勤回数は増加傾向へと転じているのです。「看護師メッセージ」からも、手薄な夜間の人員体制の強化が待ったなしの課題ですが、人員抑制が続く下で、3人以上夜勤体制の伸びも、ごくわずかに止まっている実態です。

 

バーンアウトの進行

 こうした下で、看護師は肉体ばかりでなく、精神的にも追い詰められ、バーンアウトが着実に進行している状況です。

 「看護現場実態調査結果」は、その実態を詳細に明らかにしています。この調査では、計17の設問を用意し、「最近6ヶ月間にどれくらいの頻度で感じたか」ということを聞きました。その結果は、「看護の仕事に本来的やりがいは強く持っているのだが、(忙しい仕事に追いまくられ)日々の仕事での達成感・充実感は乏しく、(肉体だけでなく)精神的にも相当に疲弊・疲労している」という深刻なものでした。専門家からは「やりがいを感じすぎるというのも、ぽっきり折れることが多くて、危険なんですよ」と指摘されましたが、バーンアウト予備軍が多くを占めているのです。

 具体的な内容を少し示すと、「こんな仕事もう辞めたいと思うこと」については、「いつもあった」「しばしばあった」「ときどきあった」をあわせた「あった」が67.6%となっており、実に3分の2の看護職が辞めたいと思っているという深刻な結果です。

 辞めたい理由については、「仕事が忙しすぎるから」56.3%、「仕事の達成感がないから」32.5%、「本来の看護ができないから」30.5%、「夜勤がつらいから」25.7%などとなっています。

 

辞めた後は4割が看護職を離れる

 しかも、辞めたいという人に、その後どうするかを聞いた設問では、「看護とは別の仕事につきたい」23.8%、「働かず、家庭にいたい」16.3%と、4割が看護職を離れるという厳しい結果です。

 また、「パートなど、もう少し勤務の軽い形で、病院・診療所に勤務したい」が25.8%を占めており、辞めた後も交替制勤務など看護職としてフルに働くという人は、2割強しかありませんでした。

 「看護師のメッセージ」でも、自らが大変というだけでなく、患者に我慢を強いらなければならないことへの悔しさ、苛立ちが切々とつづられていましたが、仕事に追いまくられての肉体的疲労感に加え、満足な看護ができないということが精神的にも看護職を疲弊させ、バーンアウトに追いやっているのです。

 

大幅増員が緊急課題

 現在の異常な忙しさを緩和し、本来の看護ができる喜びを取り戻すこと、それがまさに緊急課題となっています。

 

  看護職が「安全でゆきとどいた看護がしたいから、看護師をふやしてほしい」と、今こそ声を大にして世論に訴え、政府に迫らなければなりません。

 この点で、厚生労働省が今年度設置を予定している「需給見通しの検討会」が、当面の重要な場になります。厚労省は今年、検討会で基本的な考え方をまとめ、来年は各県で需給計画をつくらせ、その積み上げで新たな見通しを策定する予定です。ここに現場の実態を反映させていくことが大切です。そして、診療報酬改定や看護師配置基準の抜本改善につなげていくことが求められています。

 

 

以     上

 


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