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医療・福祉、社会保障

 

2004年度運動方針・私たちをめぐる情勢の特徴から(04/7月)

医療・福祉、社会保障をめぐる情勢

 

<年金、医療・社会保障をまもれ>

 

1) 給付をダウンさせ、保険料をアップさせる「年金改悪」に反対する国民世論が大きく広がりましたが政府案は国会を通りました。自民・公明与党の政府案は、厚生年金保険料率を10月から 0.354%づつ13年連続で引き上げ、国民年金保険料は05年4月から毎月、 280円づつ13年連続で引上げるものです。今後の給与額の増額により政府・与党が主張した上限は守れないことが国会の審議で明らかになりました。また給付についても現役時代の50%は保障するというものでしたが、出生率の低下が明らかとなり、給付を支える前提は崩れ、実質50%は保障されないことも明確となりました。さらに基礎年金の国庫負担割合の引上げ財源として年金課税や消費税増税なども計画されています。一方民主党は、3%の年金目的消費税を07年度から導入するとし(年間 7.2兆円)、政府案で保険料引き上げが完了すると称する17年度までで計算すると総額79.2兆円となるなど、与党と負担増を競い合うものです。

2) 「年金・社会保障」の歪みの原因と責任は、自民党の大企業優先の税財政の仕組みにあります。国民が払った税金が社会保障に使われる比率は29%で、軒並み40%台の欧米諸国に比べて低く、企業の税・社会保険料負担が国民所得に占める比率も12.3%で、英16%・独17.7%・仏23.6%と比べて低水準で、大もとから「改革」することが必要です。国民春闘・全労連は、年金改悪に反対する4・15ストライキなど国民諸階層に行動を呼びかけ、全国で 100万人が参加する大きな行動となりました。

3) 小泉内閣による医療・社会保障「構造改革」は、昨年4月からの自己負担3割への引上げと保険料の引き上げに続いて、更なる改悪の具体化をはかろうとしています。高齢者医療保険制度の創設、医療保険の都道府県単位運営、公的医療機関の再編縮小、株式会社の病院経営解禁、保険診療による給付の縮小拡大、混合診療の導入(保険料金と自由料金の混在)、DPC(診断郡分類別包括評価)の拡大などがその主なものです。これらはこの間すすめられてきた「自由主義」「市場主義」による規制緩和、公的医療保障体系の切り崩しによる「民営化」路線と「構造改革」の特徴で財界の要求にもとづくものです。4) 出口の見えない不況と生活悪化、加えて連続した社会保障改悪によって、「サラ金地獄」も広がり、暮らしていけない、営業を続けられない、農業を続けられない、医療も受けられない、小泉「改革」による被害が深刻になっています。こうしたもとで自営業者や退職者が加入する国民健康保険は、国保組合を除く2373万世帯(03年3月厚労省)の加入者に対し、保険料滞納世帯が 455万世帯(03年6/1現在)、19.2%に上り、保険証を取り上げられた窓口10割負担の「資格証」発行世帯は26万で、保険証の未渡し(窓口留め置き)や未加入者などの保険証のない世帯も 100万を超えるといわれます。短期保険者も増加してきています。医療を受ける権利の土台である国民「皆」保険制度そのものが危機を迎えており、これを守る共同のたたかいが求められています。

5) 政府は、総合規制改革会議を衣替えした「規制改革・民間開放推進会議(座長宮内氏)」の立ち上げによる規制改革と行政サービスの民間開放に関する重点検討事項を決めようとしており、こうした流れを加速させようとする表れです。医療を受ける権利を破壊し、公的医療保障制度を「崩壊」させる重大な問題であり、憲法第25条と根本的に矛盾するものです。「いつでも・どこでも・だれでも・お金の心配なく・必要な医療を受ける」ことは、国民共通の願いです。一昨年の「3割負担・国民負担増反対、いのち削るな」の世論は、3千万筆を超える国会請願署名となって国会を包囲しました。こうした医療の充実を求める広範な世論に依拠して、職場と地域から政府と国会を包囲するたたかいを各地で展開することが求められています。

6) 4月の診療報酬改定は、国民的な課題となっている医療の質と安全を確保し医療改善・事故防止の見地からは極めて不充分なものとなりました。また、特定機能病院に導入されたDPC(包括医療)を民間病院へ拡大し、急性期・慢性期を問わず包括評価とする方向が示されています。DPCは各病院ごとに係数が決められ、その係数が収入に大きく影響します。在院日数を縮小することなどにより係数が変わるため、医療機関の間で係数の引き上げへ向け競争原理を持ち込む関係にあります。これらの改訂を公的医療保険の給付範囲と医療提供体制の双方の縮小をめざす次回抜本「改革」の第1歩と位置づけていることは重大な問題です。また、診療報酬を決める中央社会保険協議会(中医協)が、「汚職」にまみれていることが明らかになりました。「政治と金」で医療の質と内容が決められることは断じて許せません。真相究明と組織の改革・改善が求められています。安全・安心の医療提供とスタッフの充分な確保、医療労働者の賃金と労働条件、地域住民に信頼される医療機関、これらに深く関わる「診療報酬」改定の取り組みは、国に対する制度・政策要求としていっそう重視することが必要です。

7) 2000年4月に発足した介護保険制度は、現物給付の「医療」と違い、保険料負担に加えて利用回数ごとの料金負担の重さなどから、当初の設計した内容になっていません。在宅サービスは利用限度額の平均4割、要介護認定者の約70万人 (23.4%)がサービスを利用せず、特別養護老人ホームも入所まで2〜3年かかるなど、在宅もダメ、施設もダメとなっては、存在意義が問われます。2005年には見直しが予定され、@保険料徴収を現行の40歳以上から20歳以上に広げる、A障害者施策との統合で、障害者からも保険料を徴収することなどを検討課題としています。国の責任を棚上げして負担を拡大するのは本末転倒です。国の制度として、保険料・利用料の免除・軽減制度を確立すること。在宅・施設の深刻なサービス不足を解消すること。介護職員の劣悪な労働条件を改善すること。以上のために国庫負担を今の倍にすることが必要です。

8) 今まで訪問看護で対応されていた障害者への在宅看護が支援費制度として発足したのが昨年の4月でしたが、発足初年度から約30億円の赤字となりました。厚生労働省は介護保険との統合を打ち出していますが、その場合には従来の応能負担から応益負担となり介護保険と同様に一部負担が発生することになります。障害者年金や手当てなどでは支払いきれず、サービス水準の低下などで支援費制度自体が危機的な状況になります。

9) 医療提供体制にも重大な問題がおきています。この4月から国立病院( 154カ所)は独立行政法人となり、「経営効率追及型」となって国立医療機関が担うべき分野が狭められようとしていますし、戦後の保険診療で重要な役割をはたしてきた社会保険病院や労災病院の縮小・統廃合、自治体財政の「効率化」と市町村合併の強要(「3135市町村が、1770前後に」04/03/11・毎日新聞)によって自治体立病院を統廃合するなど、再編計画が各地で浮上しています。また、国立大学(89カ所)の独立行政法人化は、国立大学病院の運営に支障を来たすことが危惧されています。これらは共通して、病院と病床の再編・削減が計画され、雇用の不安と地域医療の不安をもたらしています。国公立公的医療機関は、高度医療や政策医療、地域医療に重大な役割を果たし、国民医療ネットワークの核となっています。この統合・縮小再編は、国民医療に有害であるだけでなく、安心して暮らせる地域社会の活性化に逆行するものです。

10) 4月1日に内科・外科・病理・法医学の4学会が、事故調査を専門に検証する第3者から成る中立機関の創設を提唱しました。事故の当事者側と事後検証を担う立場の学会が共同歩調をとったという点で注目すべき内容であり、機関の性格や役割については私たちの要求とも共通するものです。国民の切実な要求であるにもかかわらず、事故対策に関わる政府予算は医療安全対策を推進する項目全体で7億3千万円弱です。この間の抜本的な事故防止策の議論のなかでは、医師と看護師などの医療資格者の人員配置充足数が焦点となっています。マンパワー対策・公的コスト負担を正面に据え、「安全コストは、国として特別の措置を講ずべきもの」、これを国民的な合意にたかめるための運動が必要です



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